おしり☆

お尻

限定版DVDのジャケット
ふじのんのお尻がラブリーでs…(ry

違います^^; そーじゃなくてー

カテゴリーを開くとここはお尻になるのです。
このblogでは、新しい記事は上に来るように
なっているので、連続投稿をすると‥‥
お話の頭は、に──
お話のお尻は、になってしまうのです…;

なので、大変読み辛いのですが、
一度下まで行って、1番目の記事を探してから
2、3、4…と記事を遡ってみて下さいませ><

blog設定で並べ替える事も出来るっぽいのですが
ねこの脳味噌では…設定できませんですTT
ごめんなさい…;;

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浅上追復譚 六夜

=6e=
■エピローグ

パパーァンッ!

「ぅ…ッわ!」

突然背後で鳴らされたクラクションにビックリ。
危うく、私は下に落っことされそうになる!
いや、正確には…お尻が半分落ちかけてます!
あああ、助けて、次郎さーん……

「よくやったな、藤乃ん」
車の中からサムアップしている眼鏡美人。
ウシシ? そんな笑みを零している。

「…観てたンですか? 意地悪ですね……」

「まぁな、せっかくの賞金首だったし♪
しっかりと記録させてもらったよ。
これでしばらく運転資金が、ムフ☆
ああ、それより…! ふっふっふっ!
いい感じのツーショットだなぁー。
どぉれ、一枚撮っとこうか」

「え? えええええ! 橙子さんやめて!
 いや、ちょ、ああああん!
 次郎さん! 降ろして下さいー!
 いやー、恥ずかしい……」

「冗談だ…本気にするなよ。
それより乗れ。そろそろ結界が消える。
急がないと衆人に知れるぞ」

急に真顔。
ああ、本当にこの人が…よく分からないです…

──こうして、事件は
市中の誰にも知られず消えていった。

壊れされた物を…遺して。

私は学園に戻り、いつもの生活に戻った。
時々、橙子さんに呼ばれて
アルバイトをすることはあるけれど。

それと──
私に『先輩以外の男性…』という存在を
教えてくれた次郎さんですが……
その後、どうやら…橙子さんの会社?で
孫受け丁稚暴行?の毎日らしいですよ。
なんでも…貸した宝石を二個も使いやがってー
だとか?

それよりも…どなたか。
式さんと先輩、ご存知ないですか…?

       【終わり?】

『後記』
書いてて楽しかったけど
読み直してみて、いまひとつって感じ^^;
うーん…
ふじのんの、黒っぽい部分が不鮮明だにゃぁ。。。
あとは…新キャラに頼るのは良くないね…
語彙がないとか展開が莫迦っぽいとかは
デフォルトにゃので問題なし(ぇ

たぶん、空の境界をこの先も観続けて
そして原作小説を読んだら、きっと
どんどん考え方が変わって行くと思うのー^^;
とりあえず、DVD第3巻まで観た
(#3はまだ一回しか観てないけど><)
までの悶々を晴らしてみました?w
とりあえずー
  _  ∩
( ゚∀゚)彡 ふじのん! ふじのん!
 ⊂彡

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浅上追復譚 五夜

=5=
■夜の繁華街 結界内

ギャアアアアアァーーーーーンンンッ!!!!!

後ろから…車が追って来る。
とても…楽しそうに踊っている。
愉しそうに吼えている。

ガァアアアアアアアンンッッ!!

パパパパパァァンッ! パンッ! パンッ!

ゴァアアアアアアアンンッッ!!

クラクションを鳴らし
車をツイストさせ
まるで獲物を嬲っているかのように
迫って来る。

不思議だったのは…誰も人がいないコト。
いくら遅い時間とはいえ…そんなコトが……?

ブオォン! ギャギャギャアアアアンッ!

来る!

「避けてッ!」
次郎さんの肩を押して、真横に飛ぶ!

車が猛スピードで横を抜けて行く

これでまた少し時間稼ぎが出来た
この間に…少しでも人のいそうな……えッ!?

次の瞬間、車は信じられない動きを見せた。
とんでもない速度だというのに、直角に向きを変え
私たち目掛け…突っ込んで、来た…

ドンっ

体に鈍い衝撃が伝わり、そして宙を舞う

次に来る衝撃は、固いアスファルトに
叩き付けられる自分の体…ね

──覚悟を決める
いくら痛覚がなくても、骨が砕け内臓が破壊され
脳が挫傷すれば、そこで死に終わる。

……

…………?

だが…それは思いの外、小さな衝撃で済んだ

「う、ぐ……がはッ!」

声。…声? それは内でなく外からする声……
え……まさ、か? 

「次郎、さん…? 次郎さんッ!」

私の体と、アスファルトの間に
まるで綺麗に畳み込まれたかの様に
次郎さんの体があった。

彼は…私の身体を庇うために…

ど、どうして…
どうしてそんなにまでなって、私を──

「護ろうとするの?」そう、言おうとして
出掛かった言葉を呑み込んだ。

私を護ってくれる人なんて…居るわけない
こんな私を──
人の死に様が楽しくてしょうがない女を…
こんな血まみれの瞳を持つ女を…
穢れ切った身体を持つ女を…

護りたい人なんて…いるわけが──

「護りたいんだ…藤乃、を…」

───ッ!

「実は俺…藤乃とは一度だけ…会っているんだ…」
次郎さんは…顔を歪め、声を強張らせ、
どうにか声を出している。
私は…眩暈を感じつつ、その固く受け入れ難い言葉を
静かに聞いていた。

「俺…あのチームのメンバーって
 訳じゃなかったんだけど、兄に呼ばれて
 時々出入りしてた頃があったんだ。
 そう…あれは…忘れもしない夜。
 梅雨前だというのに、とても暑かった晩のこと、
 あのバーの廃墟で…貴女を見かけたんだ。
 何で貴女みたいな人がこんなところに、って
 思ったんだけど…俺、そのあと直ぐ、あそこから
 叩き出されちゃって…さ。ゴホッ…ゲホッ…
 今にして思えば……後悔してるんだ…
 ちょっと考えれば…あの後、何が起きるのか
 くらい…分かるだろうに…」

ガリッ

彼は…固い、硬いアスファルトに…
渾身の力をこめ爪を突き立てていた。
生爪が剥がれ指先から…血が滲み出し
新しい血糊が掌を染めていく。

ぶるぶると身体を震わす次郎さん。
その姿を見て思った。

[この人は…嘘をついている…]

その時、次郎さんは本気で私を助けようとしていたんだ

叩き出されて終わり、じゃない

…大勢に囲まれて…動けなくなるまで…殴られて…蹴られて…
助けたくても…助けれらなかったんだ

なのに…なのに…どうしてそうやって自分を責めるの?

悪くないのに…

脳裏に、バーでの出来事が流れていく

[痛くない…痛くない…居たくない…イタクナイ…]
[こんなところには…イタクない…]

「ごめん…。俺や兄貴のしたことが
 そう簡単に許されるなんて思っちゃいない。
 だけど…今はこれしか…」

それは…私も…同じこと

彼らは私を壊した 幾度も…幾度も…
直しても直しても…その度に壊された…

でも……それでも私は生きて居る
生きて居ないのは…私が壊した彼らの方だ

私は罪と罰を背負った…

それでも生かされている
先輩に救われ、式さんに救われ、橙子さんに救われ
今また…次郎さんに……

──だから

『もっと…もっと思っていたい』

ギャギャギャアァーーーーーンンッ!!!

勢い余って道の向こうまで行ってしまった
あの車が、Uターンする。

次は無い。
さっきの奇妙な動きを見て分かった。

[あれはもう…人じゃない、車じゃない]

今度は──本当に狩られる
今度こそ──逃げ切れない

「藤乃、早く逃げ──」

「次郎さんッ」
「──ッ!?」

「私の背中を…強く叩いて下さい!」

「え……?」

<☆この辺で#1のサントラ、track13開始♪>

まだ遠くの車。
私たちは…広い車道の真ん中。

「早く! 叩いてッ!」
「で、でも…どうして?」

車のライトがハイビームに切り替わる。

「お願い、叩いて! 時間が無い!」
「あ…う……ご、ごめんッ!」

バンッ! ──掌で叩かれる

「ダメ、もっと強く!」
「くッ──」

ゴンッ! ──拳で叩かれる

「もっとッ! もっと強くッ!」
「ちっくしょぉ!」

ガッ! ──肘で、打たれる!

「がふッ──!?」

来た…来た……

ひたひたと背を昇ってくる
禁断の悦びを伴う懐かしい感覚。

そして…この身を取り巻く世の仕組みが歪み、
私はこの瞬間から…世界の異端となる。
排除しようとする圧力、
抗う自分、
それが──力の根源……

「次郎さん…逃げて……」

恍惚とした知覚  [背徳の知覚]
体が疼く快楽   [禁断の快楽]

さぁ、殺せ──  [さぁ、生きろ──]

「アレの目的は私…。だから…次郎さんは、逃げて」

ゴアァァァァンンンンンンンンンッッ!!!

さぁこれでいい
もう…私を止められるモノは…ない

<☆このあたり、限定版DVDジャケットの
 振り返りふじのん画の感じで~♪>

狂ったように迫り来る車。
それはあと一秒もなく激突するだろう。
今の視力でも十分にそれは照える(みえる)。

だけど──その動きはあくまで機械的

ふふふ、あの人の出鱈目な動きに比べれば
あんなの、どうってことない

さぁ…回転軸を──えっ!?

その刹那、自分を背後から抱く手に気づく

……優しい腕

振り返ると──
もう直ぐ車に轢かれるというのに、
次郎さんは、逃げずにそこにいた。

次郎さんは真っ直ぐ私を見ている…

彼の瞳に──赤と黒の光を纏った私が映る
私の光る瞳が──映っている

     『注視して…本質を知れ…』

──そう、これが──私の力

振り返り、車にセット!

<☆このあたり、パンフレット巻末の
 原作絵師さんのふじのん正面画の感じで♪>

この力、見えるモノなら神さえも凶げよう
だけど──自分を凶げたりは、しないッ!

「────凶れぇ!」

       ‥‥グジャッ

一瞬の静寂──

そして……

ズッガシャアアンンンンンンッッ!!!!!

二つ先の交叉点に墜落する、鉄の塊…
誰もいない街角に、その衝撃音が木霊していき
やがて僅かな反響を遺し蒸発していく。

だが──まだ終わってはいない

「あぁぁぁ……ぅぅぅ……」
破壊された大きな車の中に…それはいる。

「痛ぇ……痛ぇよぉぉ……」
人だったモノが、歪んだ車に挟まれ
歪(いびつ)に形を変えている。

   [黒くなってもいいてすか──]
   [──いいですよね]

「…凶れ…凶れ……凶れ……」

「ぁぁぁ……ぉぉ……ぅ」

アレが今迄殺めた女の子の分だけ…
身体を捻じ曲げていく。

やがて、漏れ出たガソリンに火が着いた。

「ああああぁぁ、熱ぃ! あーッ!
痛ぇ! 熱ぃ! ぎぁぁぁああああ……ッ」
焼かれていく…生きたまま…焼かれていく
人だったモノ。
皮が裂け、肉が飛び散り、はみ出た骨が燃えていく。
流れ出ている血が、
フツフツ音を立てて沸騰していく。

「痛い? 痛いですか…? ふふ…痛い、ですか」

言い様の無い快感が脳と身体を支配していく。
爪先から体の中心を抜け…恍惚感が全身を円還する。
どんな理屈も、その前には通用しない。

「!」

と……いきなり視野が奪われる

……抱かれて、いる?
「藤乃……」
次郎さんの胸に…私が…抱かれている

「藤乃、もう、いいんだ……もういいんだよ」
彼の胸から骨伝いに声が聞こえる
「止めて…くれるんですね……うれし、い……」

温かい
気持ちいい
そして──懐かしい──

途端に涙が溢れてくる

「う、う、……わぁぁん………」

お母さんに抱かれて、泣き出してしまった
あの時の自分が、今また、ここにいる……
ただ泣いている
──哀しいわけではない
──怖いわけでもない

[ただ…泣きたいから…泣いている……]

「タスケ…タス…テ……」
声が聞こえる
燃え盛る炎の中で、それはまだ逝きていた

「う、どうしよう……
 悪い奴だったけど…救急車とか、呼んだ方が…」

「……その必要は…ないです」

まだちょっと流し足りない涙を
指の背で払い、そっと振り返る。

「彼は手遅れです、もうずっと前に。
 それに…もし、あのまま放逐したら
 もっと災いを振り撒くと思います。
 だから…逝かせてあげないと……」

彼の肩越しに…
車だったモノを──直視する。

       [アレの本質は解明済み]

欲望に付け込んで男を中から喰らい、
そこに隠れ居るモノに…統覚を集中

「魔枯れ……」

車内から、魔の気配が枯れ落ちていく。

[其は…浅神の古文書に在りし…退魔の力]

魔とはいえ、その存在をこの世界に繋ぎ止めていた
不可思議な理(ことわり)を捻り切る

刹那、不思議な感覚に取り巻かれる?

身を取り巻く不快感は…そのままだけど
外からの圧力が…消えていく…?

[わたしは…ここに居ても…いいの?]

ボヴァッ!!

「うわッ!? 車、が…?」
炎が、白熱化する
そして間もなく、それは跡形なく
燃え去っていった……

「はい、これでお終いです」

──ストンっ

え? ──あれ?

足腰から力が抜け、尻餅をつく。
力が…入らない?

そっか…痛覚が…元に……

そう思った瞬間、体から存在感が
ふぅっと消えていき、
姿勢を維持できなくなっていく。

「!」

…と、目の前に手?
次郎さんの手。

「…ありがとう」

握った手を頼りに…

「あ…れ…?」
やっぱり右足に力が入らない。
ストンッとまた片膝をついてしまう。

「だ、大丈夫か!? どこか打った……
いや…やっぱり…さっき背中を突いたのが…」

次郎さんは申し訳なさそうにそう言って──

「あ…」

私に背中を向けてしゃがみこんだ。

その姿を見て…心臓がドキドキ踊りだす。
信じられなかった!
自分に…まだこんな感情があったなんて。

ちょっとお行儀が悪いけど…この直球な
誘惑には勝てず、お背中チョット拝借です♪

そんなに大きな背中じゃない。
でも…とても懐かしい背中…。

彼がこちらを見えないのをいいことに、
こっそり二度三度と頬擦りしてしまった☆

「痛くないですか? 大丈夫ですか?」

「少し…いたいです。いたいですよ……。
 でも……もう、平気ですから」
そう小さく、彼の耳元に…訴えた。

──居たいと涙は流した。
だからもう泣く理由は残っていないのだから。

もう夜明けが近い。
頭上に星を湛えた蒼天が広がっていく。

そんな空を見て思う──

「今、あの二人は…どうしているのかな…」

       <終わり>

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浅上追復譚 死夜

=4=
■廃墟ビル 魔窟

もう幾度となく通ったビル……
人出の多い繁華街にありながら、
このビルのある小さな一角には人の気配がない。
事件があったからではない。
ここは元から「そういう場所」なのだ。

正面の入り口は小さなエレベーターホールに
なっていて、その脇、外から目の付きにくい場所に
ビル内部へと向かう通路の入り口がある。

ボロボロになった階段を
外からの僅かな光と、足元の感触を
頼りに一段一段降りていく。

枯れたコンクリートの床を
ジャリジャリと靴が磨いていく小さな音が
通路の奥まで響いていく。

降り切ったフロアの一番奥が…
彼らの言う「アジト」だったパブの跡。

漏れる明かりに乗って血の臭いが漂ってくる。

誰かが居るのは間違いない。

   [……違う、それは違う]

「次郎さん…?」小さく名を呼ぶ

   [他に居るのは誰か、ではない]

「誰か…いるの?」

   [知覚に訴えてくるこの気配は…]
   [人のモノとは…思えない]

返事が無い。パブの中を覗く。

ムッと血の香りが強くなる。

棚に置かれたランプの光が、部屋を照らしている。

床、ビリヤード台、カウンター
そのどれにも血糊がベットリこびり付いている。
だけど…どこを見ても次郎さんの姿はない。

コト…ッ

カウンターの奥で何かが倒れる音?

…七歩進んで、奥を覗き込む。

「あ……ぁぁ…!」

意識が遠のき、全身に震えが走る。

そこには…写真のままの姿の…
次郎さんが…置かれていた。

進もうとするけれど…脚が思うように動かない。
気持ちだけが空回りしていく。
そう──回っているんだ。
[気持ちいい]・[恐い]
[快感]・[悪感]
まるで二つの軸が逆回転していくように…

「ダメ…だ…来ちゃ…」

ピクリとも動かない、死体のような体から
微かな声がにじみ出る

良かった…まだ生きている!

「次郎さ──」

私の言葉は、そこで捩じ伏せられた。

強い衝撃が体を襲う。
気が付けば…目の前に敗れかけたポスター。

首を掴まれ、一気に壁に叩き付けられたようだ。
身体は宙に浮いたまま、胸から顔にかけて
猛烈な力で壁に押し付けられている。

「つまんねーな。これじゃ狩りになンねー」

後ろから…知らない声。
それは…とても不快な声。

急に体が軽くなる──と、
またも強い衝撃が体を襲う。

呼吸をするまもなく、右肩を掴まれ
身体は半回転。

どうなってしまったのか…、
私の身体は…あのビリヤード台の上。
身体は全く動かすことが出来ない。

再び、視界の外から不快な声。
「おめぇが浅上なんとか、か?
 見たところ…ふつーのスケのようだが…」
おぞましい視線が、私の身体を舐めていく。

「こんなンが、俺の舎弟を皆殺しにしたんか?
 まっジかヨー。…世も末だ…」

ドスッ

お腹に…何かの強い衝撃。

「あ? なんだ?」

……ドン、ガン、ボン!

お腹、胸骨、お腹…3度続けて衝撃。

「あっれー?? おめぇ…面白ぇな……?」

ゴリゴリと肉を握り潰されている…

「痛くねーのか? それとも気絶済み…じゃ、ねぇな。
 あ──! あ~あ、そっか…。おめ、人形みてー
 って言われてだんなっけな」

「──ぇ!?」

浅上・俺の舎弟・人形……

どうしてそんな事…
あの事は…もう誰も知らない筈なのに!

……ああ、そうか
この人も…啓太さんのグループの…

衝撃のせいか、頭が混乱している。

起き上がって相手を見ようとするが…
ダメ。動けない…

「なるほど、こりゃいいねぇ。
 狩りは激マズだったが──料理の材料としちゃ
 極上級品ってか? うははは、こりゃ楽しみ甲斐が
 相当ありそうなんだぜ」

「やめ…ろ……その人に手を……」
視界の端に…幽霊のように立ち上がる
次郎さんの姿…

「……うッせぇな」

そして……彼の姿は一瞬で消えた。

ガッシャーーーーンッ!!!

何をどうしたら、そうなるのか…
次郎さんの居たところが押し潰される。
その上から棚という棚、壁、空き瓶の山、
そういったものが降り注ぐ。

湧き上がる埃の向こう。
山となった瓦礫の下から僅かに見える
石像のような一本の手。
指が小さく動いている。

「オメーはすっこんでろって、言っているッ!」

ズッシーンッ!

落ちてきたコンクリートの塊が
その手を…潰した…

「いやあああああぁ! やめて!
 次郎さん、死んじゃうッ!」

「あー? 別に奴を殺すつもりはねぇ。
 んなの面白くねーし。どーせ、この程度じゃ
 死なねーだろ? 死んでっかもしれねーけど。
 それよりー、
 俺がヤりてぇのは…おめーの方なんだけどよぉ」

制服が強引にたくし上げられる。

「──命令だ」

ヤ・ラ・セ・ロ

その一言で…アレは…私の体から全てを奪った…

下着を引き剥がし
露となった肌を…乱暴に弄られる。

固より、抵抗するつもりなんて、初めからない
今、側にいるナニかが、私を求めているのは
パブに入る前に分かっていた。

「俺の自慢のモノはな、ちょいと特別製でね。
 なかなか満足感が得られねぇ。
 女の方が先にイカれちまうんだ。
 だが…おめぇなら…楽しめそうだ。
 なに、人形のままでいい。
 ああ、そうだ。
 人形は、楽しまなくていいんだ。
 楽しむのは…俺だけで充分なんだからな」

なんて理屈…
でも、もう…このままでいれば…いい
このまま、されるがままでいれば…いい

そして…終われば…彼は救われる…

そう思った矢先。

ドドーンッ!!!!!!!

自分の体とは…違う場所から大きな衝撃!?

と、直ぐに手を強く引かれる。
その手の中には赤く光る欠片?か何か。

「立って! …逃げ、るんだ!」
床に下ろされる。
目の前には、ボロボロの次郎さんが…!?
しっかり立つ事さえままならないのに…
それでも私を出口へと引いてってくれる。

脚の感覚が酷く乏しい
上手く足を運べない
でも、どうにか、一歩ずつ出口へと進んでいく

ビルを出る時、地下から大きな衝撃。
「小賢しい真似をぉーーーーーーーッ!」

パラパラと埃や屑が落ちてくる中、
どうにか、建物の外へ飛び出した。

「早く! こっちへ!」

次郎さんに手を引かれ、小さな路地へ向かう。
この前通ったあの道だ。

キィィーーーーーギャンンンン……ッ!!

どこからか、車の音!?
まるで獣の咆哮のようなそれは…
距離も方向も掴めないところから聞こえてくる。
でも…確実にこれだけは感じ取れる。

=近付いて、来る=

「はぁはぁ…」
呼吸が上手く出来ない
右足の次に、左足が出せない

気ばかり焦って、先へなかなか進めない

あの裏道をヨタヨタと駆け、ようやく
ロータリーに抜けるドアまで辿り付いた。

「な、なんだ…? 開かない、どうしたんだ?」

ギャギャギャ………ァァ!

タイヤの軋む音が、ビルの谷間にこだまする。

──見える。
鉄で出来たその扉の向こう、
二つの眩い明かりが……こちら向く!

ギャオオオオオオオオオオオンン

「くっそ! 奴が来る! 早く、開け、この!」

違う…
車は…前から…このドアの向こうから!

ゴアアアアアアアアアッ!

「危ない! 逃げて下さいッ!」
私は──次郎さんの腕を力一杯引いた!

ガッシャーンッ!! ガッガガガガ‥‥ッ!!!!

次郎さんがいた場所に、ポッカリと穴が開き
彼が開けようとしていた扉は…
何処かへと消えてしまっていた。

グォオオオオンッ! グォオオオオンッ!

私たちの後方の雑居ビル一階に、
大きな車が頭から突っ込んでいた。
大きな唸りを上げ、そこから抜け出ようと
タイヤを軋ませ足掻いている。

「なんて…」
そこに不吉な影を見る。
黒い──本当にどこまでも黒い、影。
赤もなく、緑も青もない、漆黒だ。

「なんて…魔的な……」

ギャギャギャ…ガッシャーン!
……シュウシュウシュウーーゥゥッ!!

車が…出て来てしまった。
白い煙が立ち上り、車体も大きく傾いていて
とても走れそうには見えない。
だけど…次第に煙は消えていき──
気が付けば、元通りになっている!?

そうだ、立ち止まっていてはいけない
「早く、早くここを離れないと!」

それからはもう無我夢中だった。

自分の身が壊されそうだから怖いのではない
目の前にいる人が…壊されそうだから怖い

次郎さんの顔に…先輩の顔が重なる。

もし、次郎さんまで死んでしまったら…
彼の顔が…夢の中に出てきてしまったら…
今度こそ…私は…完全に壊れてしまう

       <続く>

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浅上追復譚 三夜

=3=
■夜の繁華街 歩道上

男の人の気配に背筋が凍る!

振り返ると同時に…声がした

「──浅上、さん。
 やっぱり…もしやと思って来てみれば…」

そこに昼間の彼がいた。
彼の顔は、こちらが気の毒なるほど
表情が傾いていて、とても見ていられない。

「とにかく…こっちへ」

彼は私を表通りとは反対の
暗がりの強い脇道へと誘っている。

普通に考えれば…それは危険な誘いだ。
でも…私はそれに素直に従った。

彼も男の人。
だから、女を抱きたいと思うだろう。
もしかすると、私を暗がりに連れ込んで
彼らのように…ただ、ただ乱暴に
欲望だけをぶつけようとするかも知れない。

でも──それならそれでもいい。
そんな事を思ってしまう私は…変だろうか。

でも…こんな穢れている私を
この人は抱きたいと思うだろうか…

そこでいつもの顔が浮かんで来てしまう。

[先輩…先輩は…こんな私をどう想いますか…?]

「さ、この扉を…」
彼の声で我に返る。
行き止まりの先にある、奇妙なドア?

ここが彼にとってのアジト、なのだろうか。

[そうか…わたし…また…されちゃうのか、な]

彼が粗末な鍵を回して
それを開けると…光が漏れてくる?

「あ…ここは……」

そこは駅前のロータリーだった。
まだたくさんの人が、駅へ駅へと足を急かせている。

「俺、子供の頃から、パシリばかりやらされてたから
 この辺の裏道は全部頭に入っているんだ」
彼の顔からは深い皺は消え去り、
安堵感を漂わせて、にこやかに私を見ている。

彼は、こんな私を案じてくれていた。
もしかすると、ここに通っていた私を
ずっと見護っていてくれていたのかも知れない。

「ありがとう……」

自分でも思いがけない言葉が
咽から零れる

彼は…ニコリと笑って答える
「無事でよかった」
眼鏡の奥の瞳が…優しく私を見つめている。
その眼は、やっぱり──先輩そっくりさんだ。

だけど、
直ぐにその瞳を逸らし、彼は背中を見せて言う。

「昼間も言いましたけど…
 貴女を捜している人がいるんです。
 いや、あの人は…もう人じゃない。
 兄がいたチームの連中も…鬼畜だったけど
 今、藤乃さんを捜しているのは
 それ以上のヤツなんです。チームの創設者で、
 初代リーダーらしいんですけど
 その当時で既にかなりのワル。ここの警察でさえ
 下手には手を出せなかったとか…。現に…数日前、
 兄はそいつに…半殺しにされたと…聞いています。
 たぶん…もう…普通の生活には…。
 もしそんなヤツに捕まったら…!
 今度こそ…貴女は…藤乃さんは…」

彼は、そこまで言い吐くのが精一杯だったのか
身を震わして…固まってしまった。

一台のタクシー停め、私を乗せる

「…本当に気をつけて下さい。お願いします。
 今日みたいなことは…」

彼の言葉を遮るように、私は頷いた。

タクシーは、仕事を続ける。ドアを閉め
もっと彼の話を聞いていたいと想う私を乗せて…
静かに走り始めていた。

■夜の繁華街

「あ゛ーッ? ンだ奴はッ!?」

この二車線の道を渡れば、あの女を狩れるというのに
女の後ろから来た妙な男が、
路地裏へ連れて行きやがる。

くっそ、どこの野郎だ!
俺の獲物を横取りしやがって…打っ殺してやる。

「おら! 邪魔だ退けぇ!」

行き交う車を叩き停め、道路を渡り
女の消えた路地裏に駆け込むが…
そこにはもう、獲物の姿はなかった。

のッ野郎ぉーーーーーーッ!

振り上げた拳で、傍にあった自販機をブン殴る。

破壊を逃れられなかった自販機たちから…ドッと
缶が溢れ出し道を埋め尽くしていく。

あ──いや、ちょっと待てよ、
あの男、どこかで会ったことがあるよな。

ああ、アイツだ。
啓太の弟って名乗っていた糞ガキだ、よな。

いけねぇ、いけねぇ、頭に血が上ると直ぐコレだ。
ま、…それなら…今日はこれで終いだな。

何、獲物はもう網にかかったも同然だ。
後は、コロさぬように網から引き上げ、
時間をかけて…じっくり料理して
いかに……喰らうか、だな。

「はは、はーははははははーッ!」

裏道に獣が笑う。
騒ぎを聞きつけやって来た警官が闇を照らすが
そこには──一つ残らず潰れた大量の飲料水の缶が
地面を濡らしているだけだった…

■寮 自室

──翌々日。

いつもの通り授業を終え、寮に戻り、夕食を摂る。
部屋に戻る頃には、窓の外はもう真っ暗。

「え…!?」
突然、携帯電話が震え出す。
メール着信。
……胸が激しく動揺している。

この時間のメール
嫌なメール
たった一つのこの合図で…私は…

だけど……あれ以来
この時間にメールは来なくなった。

当たり前だ。
人は死んで何処かに逝くかも知れないけれど
そこへ電話なんて持っては行けないのだから。
仮に…あの世からのメールだとしても
届くわけが無い。
だって…アドレスを変えているもの。

もしや…鮮花さんから?

携帯を手に取ってメールボックスを確認。

「……なんだ」

学園から寮生に向けての通達。
セキュリティ情報や明日の予定などの
機械的な配信だった。
いつもはもっと早く来るのに…

中身は…相変わらずの不審者情報と、
明日の授業の予定、最後に
聖書の一節で締め括られている。

女子寮だから、いろいろ特殊な制約は
あるけれど、それでも、割と行動は
自由だと思う。

おかげで…嫌な目にも遭ったけれど…
ここの生活は概ね満足している。
鮮花さんとも出会えたし。
そう。出きることなら…もっと早く
知り合っていれば…なんて思うことも…。

ふふ、今日の私は…何か変。

──コンコンッ

と、ドアが静かにノックされる。
今ごろ、誰だろう?

ドアを開けると…そこには…

■寮 廊下

一年生から一通の手紙をもらう。
なんでも…、私の知り合い、と名乗る人から
寮門前で預かったとか。

「あ、ありが、とう…」

目の前に、ずらっと扇状に並ぶ一年生の子たち。

「それでは失礼します!
 浅上先輩、おやすみなさいです」

綺麗に一礼すると、一年生たちは…顔を赤らめ
ドドーッと廊下を駆けていく。
言葉で言うなら…集団脱兎のように…?

…?

その子たちが曲がった
角の向こうで、複数の黄色い声。

…??

最近の一年生が良く分からなーい

■寮 自室

封を開け、中の便箋を取り出す。
と…一枚の紙が足元に落ちる。
拾い上げようとして、手を伸ばした時
その紙が写真であることに気付いた。

「次郎…さん!?」

血塗れの次郎さんが映っている。
顔は変形し、床は血の海。

慌てて便箋を開くが…それには何も書かれていない。

いったいこれは…

写真には、今日の昼の日付が焼き込まれている。
そして気が付いた。

「これは…あの場所…」

僅かに見える床や、装飾品の残骸。
どれも…これも…皆、見覚えがある。
そして何より…
この写真自身が私にそう訴えかけている。

「行かなくちゃ…」

私は…もう使うまい、と思っていた
秘密の通路を通り、寮外へと出る。

蒼い月が雲間に踊る真夜。
私は一路、あの場所に向けて歩き出していた。

何ができるはずもなく──
それでも私は──

       <続く>

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浅上追復譚 二夜

=2=

■喫茶店 アーネンエルベ

どんな人なのか気になったので
あまり使われることない裏口から店内に入り
様子をそーっと窺う。

喫茶店にいたのは──
いつもの変な猫の店長さん?と、そして──
どこかで見たことがあるような男性。
ぼんやりとした視界に浮かぶその姿。
それに──軽い吐き気を覚える。
同時に…何か懐かしい気持ちも…
いったい…この人は…?

──自分でも信じられなかった。
例え彼女の人の知り合いとはいえ
見ず知らぬ男性の待つ席へ向かうなんて…

「浅上…藤乃さん、ですね」
その男性は、私を一目見るなり
席から立ち上がって深々とお辞儀する。

目の前の男性は、私と同じくらいの歳。
眼鏡を掛けて…なんとなく…あの人に似ている。
背格好や顔はまるで違うのに、
何故かあの人を連想してしまう。

図渦しいのに控えめで…
あつかましいのに照れ屋さんで…
現実的なのにメルヘンチックで…
そんな印象が、あの人を想わせる。

色。この人の背後に見える優しそうな色が…
先輩のそれと同じだったのも…そう想わせる
要因なのかも知れない。

その男性が安心したように呟いた一言に
私は戸惑いを隠せなかった。

「よかった…あまり変わりがなくて…」

──?
それはいったい、どういうことなのか…

「あ、すみません、名前がまだでしたね…
 …えっと…俺は…湊…次郎っていいます」

みなと……じろう……みなと?

──湊!?

私の表情を見て悟ったのか
男性は次の言の葉を急いで繋げていた。

「お察しの通り…でしょうか?
 湊啓太は…俺の兄、です」

■ミニクーパー コックピット

クラッチを踏み、セカンドにコンッとシフト。
マーティンほどパワーは無いが
エンジンはアクセルに忠実であろうと
軽やかに回転数を上げていく。

浅神の血、退魔の眼、
そして新たな能力の可能性。
ノイジェネシス、か──
ふふ、まったく興味は尽きない。

そして私は…そんな藤乃を楽しげに診ている。
やれやれ…
私も嫌な女だな。
ククッと腹の隅で笑いを回す。

さて、その浅上藤乃はどうだろうか。
待ち合わせ場所には向かっただろうか。
直接の当事者ではないが…かつて自分を弄んだ
者の関係者だ。昔の藤乃であれば…
そう聞いただけで躊躇なくコロすだろう。

「ふむ…」

そんな事を考えていたからだろうか、
それとも…他に何か要因でもあったのか、
珍しく、いつもと違う角を曲がり、そして停まる。

赤信号の交叉点の角向こうに…
あの喫茶店がある。
ちょいと魔力を飛ばして、店内を探る。

「──良好だ、な」

佳きかな、店内に違和感は全くない。
確かに、藤乃と次郎のパーソナル(境界)は
感じ取れる。ならば…顔合わせくらいは
無事に済んでいる、という事だろう。
二人の会話を手に盗るくらいは造作もないが…
そんな事をするのは野暮というものだ。

「──ッ!?」

息を呑む。
思いもしない気配が、感覚に割り込んでくる。
もしや…トートオルガの斥候、か?
いや…この気配は…それとは違う、か。

「どこだ!? 近い……あれか?」

歩行者信号に従い、歩道で立ち止まっている
人の群れ中に…何食わぬ顔をしてそれはいた。

「…………」

禍根は残さぬ方が、後々の為、か。
しかし…、高が一人の女のために
心を魔に挿されるとは…莫迦な奴だ。

「浅上藤乃…巧くヤれよ…」

そう、らしくもなく呟き、
ミニをスタートさせる。

軽くアクセルを踏み込めば
あっという間に、喫茶店も、藤乃も、次郎も、
そして人だったモノがいた交叉点も
後ろへと弾け飛んでいく。
それはもう、バックミラーの中の世界。

■喫茶店 アーネンエルベ

と──、小さな音楽が耳に入る。
時を告げる壁時計。
気が付けば、もうそんな時間になっていた。

「そろそろ寮に戻りませんと……」
実のある話があった訳ではない。
むしろ、不快この上ない、嫌な思い出話の
連続だった。

だけど…
何か…肩の軽くなる感じがしている。

目の前にいる男性は、終始、頭を下げ続けていた。
兄のした事、兄の付き合っていた男たちがした事、
そして何故か、自分自身さえも否定し
私に向かって幾度も幾度も詫びようとする。
もし、店内に他のお客さんいたら…
私は恥ずかしさのあまり、店から逃げ出していた
かも知れない。

でも──私の中の何かが…変わっていくのが分かる。
この不思議な余韻を大事に想いながら
椅子を引いて立ち上がろうとすると…

「ごめん、もう一つ…聞いて欲しいことが。
 いえ、話は直ぐに済みます」
何事かと彼の顔を見る。
その表情は今迄以上に険しい。

「こんな俺が言うと、気を悪くするかも
 知れないけど…。浅上さん、もしかして…
 今でもあそこに行ってるのではないですか?」

「……ッ!?」

どうしてこの人はそんな事を知っているの?

「やっぱり…。どうしてそんな事を?
 …いや、それは浅上さんの事情が
 あるんでしょうけど…でも、今は危険です。
 お願いです。あの盛り場には近づかないで下さい。
 貴女を捜している人がいるんです。
 とても危険な人物です。だから…今は」

それで話は終わった。
彼は私に7分この席で時間過ごしてから
店を出るよう言い含めてから店を後にした。

言われたまま、そのまま席に残っている私。

私と一緒に店を出るようなことをしなかった彼。
私に気兼ねしていたのか…
それとも…一緒に居るのを誰かに
見られたくなかったからなのか。

ともかく7分待って、私は喫茶店を出て、
交叉点を渡り、寮への帰路についた。

■夜の繁華街 歩道上

音楽が漏れ、色鮮やかな看板に彩られる夜の盛り場。
だけど…道を一本入れば、そこは人気のない
薄暗い通り。

──私を捜している危険な人物──

昼に聞いたその話が、私の心を捉えて放さない。
どうしても眠れず、寮を抜け出し、こうしてまた
あの時のように、この場に身を曝す。

また不良に捕まり、犯されてしまえばいいと
自分を呪いたくなる時がある。

自分が殺めていった男たちの断末魔。
歪んで、捩れ、潰れて、引き千切られる肉体。
そして…絶命の刹那、赤い快楽。
今でも時折、それが愛しく思えてしまう。

=ソレハイケナイコト=

だから…自分を呪う。

と、同時に──
再び、死に接して善(よ)がれば…
そうなれば…最近音沙汰のない、先輩に
再会できるかも知れない、と…
そんな淡い期待を寄せる真っ黒い自分。

「…………」
だけど…いつも結果は決まっている。

──何も起こらない

ただそれだけ。

結局、いつものコースを辿るだけ。
あのビルの前まで来て、
今、自分が痛がる心を観て確かめる。

虐げられていた時の私は──
あの時を除けば、確かに痛みなんて
感じはしなかった。

でも今は違う。
痛覚のない今でも、穢されていく自分を
想い出すと、心が悲鳴を上げて痛がる……

──どうして私は汚されたの──

こんな穢れ切ってしまった私をみて…
先輩はどう想うだろう。
あの時のように…優しい背中を
私に貸してくれるだろうか…

[心が痛い。]

そして──私は人を殺めた。
残酷に縊り殺していった。

[心が痛い。]

痛覚からではない…痛感。

[生きている実感。]

ああ、痛い、痛い、イタイ、居たい……

[心がギリギリと…痛い。]

痛くて…痛くて…哀しくて…いとおしくて…

そうしたら──
後は、先輩の家に泊めてもらった一夜を
思い出し、自分を抱きしめて眠るのだ
あの懐かしいソファーを思い描いて

「──自分を大事して」
ふと、別れ際に投げかけられた
彼の一言が胸をよぎる。

──そうだ。今日はもう帰ろう。

もう充分…

そう思って踵を返そうとしたとき…
私は…誰かに呼び止められた。

■夜の繁華街 巨大四輪駆動車ハマー

愛車を路上に放置する。
車幅がデかいから並のパーキングには
収まらねぇ。
それほどの存在感がお気に入りなのさ。

さて…今宵はどうか。
車を降り、風に身を任せて通りを流す。

あの女が現れるという、この繁華街。
店の構えやネオンは昔とずいぶん変わったが
それでもここには懐かしさが漂っている。

一身の都合で、この地を離れることになった俺は
チームのリーダーをサブに譲り、大阪へ向かった。
そして一年。
突然、後輩からの便りは途絶えた。
代わってマッポから、反吐が出るほど
事情とやらを聞かれまくった。
それで知った。
俺の舎弟は…一人残らず死んだと。

俺も、そして奴等も、随分派手に遊んださ。
どのみちロクな死に方はしないと分かっている。
だから、奴らのその死に様に興味などない。
むしろ、
俺が興味を持ったのは…誰が殺ったのか、だ。
手がかりは三つ。

一つ目は、三下の新参、啓太とかいう小僧。
唯一の生き残りらしいが…奴は何も知らなかった。
つーか、ありゃ廃人だぁな。弟の方も暇見て
張り付いてみてるが…ただのボンクラのようだ。

二つ目は、街の噂、ってヤツだが…
ま、これは信憑性がどうもなぁ。

三つ目は…これだ。
俺の携帯に送られて来ていた写真と映像。
名前までは分からないが…
礼園の制服を来た女(あま)だ。
連中、この女でだいぶ楽しんだようだが
これが来るようになって2ヶ月で連絡不通と
来たもんだ。やはり…この女は怪しい。

変な神父もそんな事、言っていたしな。

ああ、そう言えば──
あのゴリラみたいな、でけぇ神父は
最近どうしたんだよ? こいつも連絡不通ってか?
そもそも、この女のネタを寄越したのは
ヤツだったのによ。

「む……!?」
距離にして300と…70。
風に髪をなびかせている女。
まだ…中学生…いや、もう少し上か…?

あの場違いな女…ああ、間違いねぇ、この女だ!

いいねぇ、俺ラッキーじゃん。

早速、狩りを始めようか。
まだあのバーは残ってンのか?
ああ、もういい。
やヴぁかったら、車に放り込むか。

どれ…善は急げ…っと。

       <続く>

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浅上追復譚 一夜

=1=

空の境界 ふじのん夜話
『浅上追復譚』

■某所

「どこか、痛いところはないか?」
その男の人は、注意深く私を見ながらそう言った。

「いいえ、特には」
私は下着の乱れを直し、礼園女学院の制服に
袖を通しながら、小さくそう答えた。

「…………」
その人は、私の返事に軽く溜息をつくと
軽く頷いてから、机に向き直し
カリカリと机上の書類に文字を書き込み始める。

そして徐に立ち上がると、それではこれで、と
ドアを開けてさっさと外に出て行ってしまった。

白っぽい殺風景な狭い部屋に一人取り残される。
ティッシュだけが載っている机…
何も置かれていない棚…
小さなベッド……
アルコールの臭いが不快感を誘う。

しばらくして、また別の人が入って来る。

「ふむ。調子は良さそうじゃないか」
眼鏡の下の鋭い眼差しが
私の身体を二度三度と射っていく。

手にした紙束をパラパラと捲り、
この数値は…、処方は…などと独り言を重ねつつ、
目の前の席に腰を…落とす。
スラリとした脚があの粗末な椅子には長過ぎるのか
いや、きっとさっきの人に合わせた椅子の高さが
この人には低過ぎるんだ。
長い脚は、机の下で置き場所を求め落ち着かない。

この人、スタイルも抜群だし、とても美人。
いろいろ含めて、私にとってはある意味、
憧れの女性なのかも知れない?

「最近はどうだ? 変わったことはないか?」
変わったこと……?
ええ。あります。
最近…また夢を見るようになりました。

まず浮かぶのが、小さな炎
そして…男たちの歪んだ顔
意味を成さない声、声、声……
ドロドロと流れていく時間
そしていつも…血の色で夢は終わる

「それはペツルだな。破局反応を誘発するほどの
 体験だったんだ。心がいろいろ傷ついていても
 不思議はなかろう。何れ防衛機制によって
 制御されるさ。何、気にしないことだ」

……??
えーっと、何を仰っているのか分からないのですがー

「但し、切断機制だけはしてくれるなよ、と。
他には? そうだ…目の具合、視覚はどうだ?」

なんのフォローもなく矢継ぎ早に次の質問…
この人のお話を理解するには…
余程の知識を貯めておくか、せめてメモを取れる
くらいはしておかないとダメですね…
そう反省しつつ、私は質問に答える。

「相変わらず…です」
そう。
あの事件以降、視力は極度に減退してしまった。
世界は暗く、輪郭はぼやけ、とても不快。
でも──これで嫌な顔を見ずに済む、
そう思ったけれど、それは大きな間違いだった。
夢の中では…鮮明過ぎる彼らの顔が
視力とは関係なく、見えてしまうのだから。

「そうか、相変わらず、か。どれ…」
懐から…一本のペンを取り出して私の前にかざす。

──?

「これは何本に見える?」
「一本、です」
「では右目を瞑って…何本に見える?」
「一本、です」
「左目を瞑って」
「一本……です」

これに…どんな意味が…?

「では、視点を今のペンの位置、ここに固定して」

ペンを正面から…右へと動かしていく
あ…れ? うそ、二本に見える?

「どうだ? 何本だ? 一本には見えないだろう?」
コクリと頷く

そのままペンは元の位置まで戻ってくる、と──
ペンは二本のまま

「どうして…私の目は…」

「最初、一本で見えていたペンは…
 概念視覚のホロプターで捉えていたからだ。
 だが…その後、ペンは二本に見えた。
 それはビノキュラーパララシスによるモノ。
 それも…物理的なものではなく、霊的なものだ」

ああ、またこの人の言っていることが分からなーい

「いいか藤乃、よく聞け。
 君の眼は…見えなくなったんじゃない。
 進化を始めているんだよ。視力の異常低下は
 それに伴うものだ」

──進化?

その言葉に…恐ろしさを感じる。
人や物を歪め切るこの忌まわしい眼が
更に進化するというの?

「恐らく…君の眼の進化は、痛覚欠落に絡んだ
 身体における補償行動の現れ、なのかも知れん」

「私…怖いです」

「…だろうな。新しい能力がどういったものか
 現時点では分からない以上、アドバイスは出来ない。
 だが…歪曲の魔眼については…忠告をいれられる。
 Apperception、統覚を意識することだ。
 視野に入ったものは知覚できる。だが、それだけでは
 ダメだ。見えるモノを注視点におき、そのモノと
 行使する力の本質を理解しろ」

「視野にあるモノを注視して…理解、する」
届けられ記憶した言葉を、自分に理解し易いよう
噛み砕いて呑み込んでいく。

「そうだ。それだけで君の能力は、いろいろな意味で
 コントロールが容易となるはずだ」

「でも……」

「不安か? なら…ひとつ治療してやろう」

と言って、私の目の前に…指を?

……??

また数が増えるのかしら?と見つめていると──

「ぅ。おりゃッ!」

ビシッと眉間に衝撃

「痛っ」

え…? 今、私…何て?

「デコピン治療法さ、今のは…1ドルってとこだな」

「でこ…ぴん…?」

「……く、くく…はは、冗談さ。
 だが、痛い、と思ったろ? 痛覚がないのに痛い。
 それは眼で眉間の前に突き出された指を
 知覚していたからだ。そして眉間に衝撃。
 脳は経験則から、痛い、と判断したんだ。
 それが、藤乃、君の場合に必要な統覚なのさ」

えーっと……??
なんだか分かったような…分からないようなー
でも…気持ちは少し軽くなったみたい?

「では、これが新しい処方箋だ。
 いつもの薬剤師に頼むといい」
と、難しい言語で書かれた紙を渡される。

今まで服用していた薬も、この人のおかげで
格段に量が減った。
そのせいなのか、最近、触覚や味覚、
温度までもが感じられるようになってきた。

街の中で風を感じ、食堂で口にする
冷たい水が美味しくないと感じられる。
そんな当たり前のことが…とても楽しい。
まだずっと小さかった頃、当たり前に感じていた
懐かしい感覚。
それを今、僅かだけど…この手に
取り戻しつつあるのが…とても嬉しい。

「それから…これを」
目の前に…古そうな、そして大きな茶封筒が
差し出される。
受け取ると…それは見掛け以上に重かった。

「これ、は…?」

「浅神の古文書だそうだ」

浅神──
その名を聞いて…目の前がまっ暗になる。
この忌まわしい名のために…血のために…
母や私が、どんな目に遭ってきたか…

「君の父君からだ。どうしてもそれだけは
 手渡してくれと、託されてしまってね。
 まぁなんだ。君の治療報酬などキャッシュで
 もらってる手前、無碍に断れなくてな。
 ここは私の顔を立てて受け取ってくれると助かる」

あぁ…先を越された。
そんな言い方をされたら…返せないですよぅ…

父との関係は、私が引き起こした事件以来
今まで以上に疎遠となった。
ただ、それは私からではなく
父からが大きく距離を置いたから。
それは、父なりの罪悪感から、と
目の前の人は言ってくれるけど…

「それともう一つ、警告しておかなくちゃ
 ならんことがある」
カチンカチンッとライターを鳴らしながら
目の前の人は言った。

ある組織が、浅神の、私の能力に
興味を示していると──

メラメラと燃える紙束。
その光が眼鏡に映り、ゆらゆら怪しく光る。

「今の君には味方が少ない。ここで連中に
 目を付けられる事は、君にとって今迄以上の
 不幸になりかねない。だから…気をつけることだ」

紙束は跡形もなく綺麗に燃え切った。
それを見届け、髪の小さな乱れを直しながら
彼女は静かに立ち上がる。

「さて、これ以上の長居は無用だな」

いつの間に置いたのか、机の上に
シガーケース。

「あの…お煙草お忘れですよ?」

「え? ああ、そうだった。うっかりしていた。
 こっちの体には喫煙の習慣がなくてな…」

「え…?」
「あぁ、いやなに、つまらない独り言だ。
 すまん、聞き流してくれると助かる」

そう言ってドアを開け、身を翻した彼女は
私を見て、「どうした?」と小首を傾げる。

──あ、私を待ってくれているの?

ちょっとした嬉しさを感じながら…
大きな茶封筒と、鞄を抱えてドアへと向かう。
私が廊下に出ると、彼女はドアを静かに閉める。

カチャッ

ドアから小さな音。

その瞬間──
誰もいない、何もない、過去の気配さえ
その部屋から綺麗さっぱり消えてしまう。
どんな魔術なのか、魔法なのか…
この人は…本当にすごい。

「帰りに、いつも待ち合わせで使っている喫茶店に
 寄ってくれ。そこに…人を待たせている」
裏口から出ようとして立ち止まった彼女は
視線を落とし、ちょっと重たげに言った。

「私に…会わせたい人…なのですか?」
彼女の様子から不安を感じとってしまい
つい、訊ねてしまった。

「彼と会うか会わないか、話をするかしないか、
 …それは君次第だ」
それだけ言って、別れの挨拶を交わす暇も無く、
彼女は奥の駐車場へと消えていった。

建物を出て街中を行く。

いったい…私に会いたいという人は、誰なのか。
あの人は…彼…と言っていたから、きっと男性。

来て欲しい男性はいるけど…その人は…
理由もなく私に会いに来るなんて事はきっとしない。
では…一体誰が?

思い当たる…、頭に浮かぶ男性は…たくさんいる。
だけど…その人たちはもうこの世にはいない。

──いや、一人いた。

だけど…彼は私に会いたいと思うだろうか…

       <続く>

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