七夕SS?

=七夕 特別SSもどき?=
------------------------------

■朝の衛宮邸
「ぁおーっとっととぉ~~」

それは、早朝の茶の間の静寂を破る、
素っ頓狂な声で始まった。

「藤ねえ…いったいナニを?」
まがりなりにも一介の教師たる者が、
大きな葉と湯呑みを手に持ち、
見る者を惑わせる奇妙な……踊り?

──いけないっ!

あの踊りは、見る者から貴重な魔力を
奪うという『伝説』のスキルに違いない!

「えっと…先生、これでいいですか?」
桜が、埃を被った硯と、半紙を手に
トコトコと奥からやって来る。

…むむ? いったいナニが始まるのか?
もしや…桜まで怪しい(妖しい?)踊りを…

(ドキドキ)

「習字──を、するつもりのようですね」
桜に寄添って来たライダーが興味深げに呟く。

──ああ、そうか。
今日は…『七夕』だったか。

大きな葉は採れたての里芋の葉。
葉に載るコロコロとした朝露の雫を
器用にも?湯呑みに集めていたのだ。

集めた朝露で静かに墨を磨る藤ねえ。
見た通りお茶目な教師なのではあるが、
あれで習字の腕前はかなりのものだ。

「これでね、お習字すると字が上達するのよぅ。
 ついでにね、短冊に書き込めば
 願いも適うという訳で一石二鳥よねー♪」

『願い』と、そう聞いて、
かつて浅からぬ因縁の渦中にあった我々としては、
これを須らく無視することは到底出来ない…よな?

と言うわけで、習字のお時間となる。

桜もライダーも、真っ白な紙を前に
神妙な顔つきで座している。

む? ライダーって…習字できるのか。
…そういや、ライダーの願望って…?

二人は呼吸を合わせたかのように
揃って筆を手にとり、さらさらと筆を踊らせる。

俺も、脳裏に浮かんだ一文字を……
紙の上になぞりあげた。

筆を置き、一呼吸を入れる。

さて、どれどれ、と桜のを覗くと──
黒々とした墨で『平常心』とあった。

まぁ…ある意味、桜だな。うん。
で、ライダーは……

自転車』。

そう来たか。
いや、あのチャリは絶対譲らないゾ…

で、藤ねえはというと──
それはもう玄人も舌を巻くほどの達筆で

朝御飯、まだー?』。

「…………」

はいはい。直ぐに用意しますよ、と。
呆気にとられていた桜と目を見合わせた後、
肩を並べて台所へと移動する。
うむ。里芋の煮っ転がしでも作るか。

時に、俺が書いた文字は

「ふふ、ベタですねシロウ」
「…………(なんでさ)」

■その夜のこと
桜は夕食の支度をしながらも
時折、台所を離れては、縁側とを往復していた。
それは空模様を気にしての事だったのだが
ここに来て、それはついに降り出してしまった。

「……雨」

おれも桜も、雨は嫌いではない。
むしろ彼女にとって雨は「悪しき」ものではなかった。
だが、今宵に限っては歓迎できぬ憎まれ役である。

仕度を終え、あとは藤ねえの帰りを待つだけとなる。
しょんぼりとした背を見せる桜の横に、そっと並び
天を仰ぎ見る。

「これじゃあ、しばらく止みそうにないな……」

空はずっと暗く、そこにあるべき星明りに代わり、
部屋の灯りに反射する雨の軌跡が視野を焦がす。

「織姫と彦星、今年は会えず終いなのでしょうか…」

「こういう年もあるってことだな。
 ということは……この雨、涙雨ってことにもなるのか」

「──洒涙雨と、そう言うそうですね」

静かに桜の横に控えていたライダーが
本を片手に静かに語り始める。

織姫の星、織女星は、ベガ
一方の彦星、牽牛星はアルタイル

ベガは太陽から凡そ26光年。
アルタイルは凡そ17光年離れている。
大雑把だが、お互い15光年は離れているという。
光の速度で15年の距離。

「そんなに離れているのか…想像もつかないな」
「遠距離恋愛…なんですね。
 なのに一年一度、それも晴れた日にしか
 会えないなんて…」

「だな…。
 でもさ、遠く離れていると言っても、
 同じ銀河の星なんだよな」

「ええ。この地球のある天の川銀河は、
 直径にして10万光年以上はあると言われています。
 織女星と彦星の距離とは、断然スケールが違います」

「……同じ銀河(せかい)にある星と星が
 その銀河(せかい)の縁によって分たれているのか」

織姫は、機を織るのがとても上手かった。
でも機を織ってばかりであったから、人と出会う機会も無く
一人長く過ごしてきた。
それを心配した父親に薦められ、牽牛の君と結婚。
だが、幸せの余り大切にしてきた機織を疎かにしてしまい
父の不興を買って、天の川によって分け隔てられてしまう。
悲しみに暮れる娘の哀願を受け、父親は、
機織りに励む事を条件に、一年に一度、再会の機会を与えた。
それがこの七月七日の七夕の夜──

「次の再会まで…また一年…」

「──いいえ、再会は実現可能です、サクラ」
「え?」

「この場にいる者のみに、ですが
 実現する手立てが……あります」

突然、背筋を逆流するゾッとする感覚。
それは──ライダーの気の高まりが故。

「エミヤシロウ、魔力の蓄えは──充分ですね」

そう言うや否やライダーの長躯が視界から消え去る。
同時に魔力による衝撃が胸を貫いた。

────閃光!?

おれたちは、一瞬にして白熱とした強い光に呑み込まれる。

ベルレフォーンッ!!

白き有翼馬は、俺と桜、そしてライダーを背に
夜空を満たす雲を割き、天高く駈け上がって行く。
天馬は、千光年を往くが如く吶喊し
冷たい風の束が、容赦なく頬を叩いていく。

と──
その先に──黒く輝く……雲の切れ間を見た。

「あ……すごい……!」

目の前に飛び込んできたのは……星、星、星……

「宝具は大軍(てき)を屠る為のみにあるのでは
 ありません。いえ…むしろ、こういった使途こそが
 本来の有り様のはずなのです」

「良かった……彦星と織姫が……」
桜が、まるで自分のことのように、ふと呟く
だが、おれといえば満天と散らばる
この圧倒的な星の数に、目が回る寸前だ。

「これだけ星があると…どれが彦星で織姫星か
 ──わからないぞ」

「先輩、あれと──あれです」
目の利く桜が天空の二角を指し示す。
指先を追っても、特定の星に辿り付けず
桜の肩に頬を寄せ、腕から指先の延長線上に
目を走らせる。

ふむ。なるほど確かに、星の川の両岸に
明るい星が仲良く対を成して輝いている。

「感動の対面、ってとこだな。
 お互い…どんな風に見えているのかな…」

ふふふ、と密やかに頬を緩ませライダーが言う。

「ここからと同じく、アルタイルから見たベガは、
 さぞや眩しく輝いていることでしょう。
 ──ですが、ベガから見たアルタイルは
 その天空に散る他の星々と、
 そう変わらぬ明るさで…見つけるのは
 容易ではないかも知れません」

「? なんで?」

「織女星ベガは、この地球から見える星々の中で
 5番目の明るさを持ち、彦星アルタイルは
 12番目の明るさを持っているようですが、
 それぞれの恒星自体の明るさは
 アルタイルよりベガの方が圧倒的に明るいそうです」

「それは……彦星の方は、織姫から見て
 あまり目立ってない、ということか…」

「そうです、シロウ

──なぜそこでおれの名が?

「大丈夫ですよ、先輩。
 わたし、先輩の星なら、きっと──」

と、そこまで言って、その後はもにょもにょと

──ああ、分っている。
桜の視力なら、暗い星でも見つけられるだろう。
だが……おれってそんなに目立ちませんか?

「さて、そろそろ地上に降りたいところだが……」

見上げる星空は意外にも明るいのだが、
見下ろせば、そこは街の明かりすら通さぬ
雨雲で満たされている。

「そうか……。おれたちはこうして天の川を
 見ることができたけれど
 下で見上げている人にとって…織姫と彦星は、
 会えず終い……ってことになるのか」

「……そうとも限りません。
 七夕を巡る幾つかの伝承の中には、
 雨の日に架かる橋、鵲橋の逸話があります。
 雨によって天の川の水嵩が増し、行き来きが妨げられる時、
 何処からともなく鵲(かささぎ)という鳥がやって来て、
 雨の中、二人のために、その背で橋を架けてくれるという
 話があります」

「そっか。……逆境の中でも、
 二人の仲を想ってくれる役者がいるんだな…」


ふと、それがひどく身近に感じた。
それは次第にピントがあっていき…誰かとダブる。
窮地にあって身を挺し、結果、掛け橋となってくれた人。

ああ、そうか──

思い当たるその人が在ればこそ、今この時が紡がれている
そういっても過言ではない。
もしも、彼女がいなかったのなら……?
そう思い描いただけでも身の毛がよだつ。

「その鳥──」

まるでライダー

思わず桜とハモった刹那──
「わ、わぁぁあああああああああああ~~~~ぁぁ!???」

天地がひっくり返るほどの急降下!?
いや、実際、見事にひっくり返っている!
だってホラ! 足元にベガ光って!!

「っと、──失礼致しました。
 どうやら…エアポケットにはまったようです」
平然と答えるライダー。

その言葉の機微が、静かに揺らいでいるのを
おれは聞き逃さなかった。
だが、あえて不問に付そう。
何故ならば…おれと桜の命運は、ライダーが
手綱よろしく握っているのだから……ぁぁ

■衛宮邸 庭
時間にして一時間くらいだっただろうか。
俺たちだけの夜間飛行は無事終了し、
雨に濡れる我が家へと戻ってきた。

「さて──」
天馬を還したライダーが踵を返し──

「先ほどの…魔力の件ですが」
「……です、ね」
──桜とアイコンタクト?

頬を桃色に染めた桜が、俺の手を取る。
「ライダーも一緒に……いいですよね、先輩♪」

「え、あ、ちょ……待…」

こうして──衛宮家の七夕の夜は
桃色風味に更けていくのであった……

■衛宮邸 同時刻の茶の間
そこに新たな文字が書き込まれた半紙は在った。
傍らには、まだ真新しい、うら若き女性の死体?
半紙に遺されたメッセージは──

「ごはん~~~~~餓死しおうにゃわfn」

翌日の朝の食卓が、もの凄かった事は言うまでもない

【終】

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冬空に舞う桜花 32

■衛宮邸
「あら、魔術師であろうとする方が、
 種明かしをご希望なのかしら」

  ピキーンッ!

あ、ちょっと待て遠坂。落ち着け。
髪が……こうボワワーッと……!?
で――
そんな遠坂をクスクス~と眺めているキャスター。
あー、なんだ。
この二人も……似たもの同士……ってことは
ないですか?

「種は――彼です」
そっと首を右にもたげ目を伏せる。
口調は打って変わり、穏やかで慈愛に満ちていた。
キャスターの右背後には……
壁にもたれ寝落ちしている一成の姿。

「一成(かれ)を依り代にして自分の幻影を?
 魔術刻印なんて持っていない普通の人じゃない。
 そんなこと、出来るわけが――」
出来るわけ無いと言わんばかりの遠坂に

「あら、柳洞寺の山門にも魔術刻印はなくてよ?」

むぐぅ、と舌戦にまたも敗退な遠坂。
そうか。キャスターのサーヴァント、アサシンは
山門を寄り代に……だっけ。
そもそも山門に魔術刻印なんて無いもんな。

「あの山門には──
 『相当の歴史』が積み重ねられていた。
 だから、サーヴァントの召喚に使えたのです。
 イッセイには、それほどのモノがない。
 ですが彼には『未来への可能性』があった。
 ですから、それを寄り代にして我が身の幻影を、
 言わば召喚したのです」
まるで俺に話し掛けているように
キャスターは言った。

一般人である一成には魔術刻印は無い。
だから万が一、キャスターの幻影が攻撃を受けても
回路が無いためダメージが一成の身体まで到達しない。
その代わり、幻影の能力は限定され、攻撃力は
豆鉄砲程度に低下。それがあの決定力に
欠けた奇妙な戦いの理由であった。

「ふーん、なるほどね。理屈はわかったわ。
 でも、その幻影が可能なら、臓硯との戦いも
 多少は楽になるかも。
 ね、やり方、教えてくれない?」

「それは無理でしょう。
 サーヴァントとして召喚される際、私が
 生前使用していた魔術式を、現在のシステムに
 シンクロできるようコンパイルとアセンブルが
 幾度も繰り返さてしまった。
 これを貴方に教示しようとするのなら
 最初の一小節で、貴女の脳は容量限界を超えて
 しまい、容易く壊れてしまうでしょう」

キャスターのにべも無い言葉に
がっくり項垂れる遠坂。

「リン、あなたはこの時代の若き魔術師としては
 大変優秀だ。今はまだ経験不足な点も見えるが
 良くも悪くも王道を往く正統派魔術師として、
 大業成すことも可能でしょう」

「正統派、ねぇ……」
「すごいじゃないか、遠坂。
 キャスターに誉められてるぞ?
 さすが五大元素を属性に持つエリートだな」
「士郎。今のキャスターの台詞、額面どおり
 受け取らないでくれる。
 別に誉めてくれたわけじゃないわ、でしょ?」

「ふふ……どう取るかは貴女次第ですが」
「え? 誉めてたんじゃないのか?」

「そもそも魔導に正統派なんてカテゴリーは、
 分類の仕方の履き違えよ」

くすくすと笑ってからキャスターは続ける。
「イレギュラーな物にこそ秘めたる可能性がある。
 それは魔導にも当てはまる
 サクラ然り、シロウ然り……」

「分かってるわよ、そんなこと。
 士郎や桜のそれを見て――
 どれほど打ちのめされたことか。
 でも仕方ないじゃない。
 私の根源(スタイル)はこれなんだから。
 なら、トコトン正統派とやらを
 突き進んでやるんだからー!」
グッと何かを掴んで引き寄せるかのような口調。
なるほど。
これがキャスター流の励ましの言葉、なのか?

遠坂は、トンっと湯飲みを机に置いて言う。
「さて、夜も更けて横道も充分探検したし、
 総括といきましょ。
 結局、教会のこと、どうだったの?
 思惑通りことが運んでたのかしら?」

キャスターは小さく首を横に振る。
「当初の目的、教会の裏を探ることには失敗、ね。
 攻撃の隙に、リンとシロウに教会の中身を
 その目で見てもらおうと考えたのですが。
 朝を待たず、そこに在ったものは
 痕跡残さず消えていることでしょう……」

「それでも金髪のサーヴァントの存在は
 確定できた、と」
今度は小さく頷くキャスター。

ふむ、と一考して遠坂は斜に構えて言う。
「……本当に、それだけ?
 他に何かあったんじゃないの、目的が?」

溜息一つ零してキャスターが答える。
「目的はあったが――
 あなたたちが教会で見たことが全てですよ。
 それ以上でも、それ以下でもない」

遠坂とキャスターのやりとりが良く見えないが……
教会での一連の出来事の中に
何か重要なことが……あったという訳、か。

「――わかったわ。でも……今度から
 事を起こす時は一言欲しいわね」
そう言いながら、よっこいしょっと立ち上がる遠坂。
アーチャーの使った術でかなり魔力を消費したのだろう。

「さーて、全員魔力不足なんだし、もう休みましょ。
 イリヤ、あんたも相当へばってるんでしょ?」
アイスをすっかり食べ終えていたイリヤは
それでも興味深げに遠坂とキャスターのやりとりを
聞いていたのだ。
「ふーんだ、こんな消費量、バーサーカーに比べれば
 大した事無いもの。でも、今日はもう休むわ。
 おやすみなさい、リン。シロウもね♪」
ポンっと立ち上がると、いつもの華麗な挨拶をして
トテトテと廊下に出て行った。

「ああ、おやすみ。ちゃんと歯、磨くんだぞー」

遠坂はくるりと振り向きアーチャーに「どう?」
と合図を送る。
「こちらから撃って出るには心許ないが
 ここで迎撃を決め込むのであれば
 魔力の残量には問題無かろう」
そう言って赤い男は姿を消した。

キャスターも半落ち状態の一成を助けながら
宛がわれている寝所へと向かっていく。

「さて、それじゃ俺も――」
話が済んだのであれば、
一刻も早く行きたい場所がある。
それが気になって、話にも集中できなったくらいだ。
湯飲みなどの片づけを後回しにして
立ち上がろうとすると――

「士郎、あんた、してる時、桜とキスはしたの?」
はいー? いきなり何をー?
とんでもクエスチョンが背後から飛んできた!?

/////////////////
■~今回のNG~

ねこ 「会話シーンだから、盛り上がらないね」
桜  「先輩と……キス……キス……はふ」
凛  「盛り上がっているのが一人」
桜  「当然、再現シーンはあるんですよね☆」
監督 「無い」
桜  「・・・・・・・ゴゴゴゴゴ」

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冬空に舞う桜花 31

■衛宮邸
「なるほどね。でも――
 貴女にしては動機が弱いって感じるけど、
 私の気のせいかしらー」
遠坂は手にした湯飲み越しに
じとーッとキャスターを横目で見ている。

やれやれと顔を傾げたキャスターは
「ここはからは、
 あくまで推測の域を出ませんが――」
そう釘をさして、再び言葉を繋げていった。

臓硯との戦いに介入してくる俺たち以外の第三の
勢力を警戒しているのだという。
この戦いに勢力の鼎立安定はあり得ない。
むしろ、どちらの勢力にとっても、
第三勢力は大変危険な因子となる。
だから事前にその芽を摘んでおきたいと、
そう言うのだ。
そのためには、あらゆる可能性を排除する。
それが例え『教会』であっても、だ。

現に、予想だにもしなかった金髪のサーヴァント
の出現。
あれがもし、臓硯との決戦時に現れていたら
果たしてどうなっていたか。
もし、あいつが俺たちの敵に回っていたとしたら?

そこまで聞いて、
改めて、この戦いの底の見え難さに恐怖を覚える。
まだこれから先、金髪のサーヴァントのような
謎のカードが、繰り出されてくるのだろうか?

金髪……金髪?
「あ、そういえば……
 俺、教会で金髪に会ったことがあるぞ」

「――――ッ!!!!!?」
あ、遠坂ぁ……その目は怖いぞ。

「え、あれ? 金髪? あ、そういえば……
 桜の家の近くで……桜に話し掛けている金髪の男
 見た記憶が……あン、士郎、その目、こわーい」
なんだい遠坂もかー。ドッと疲れがこんにちは。

俺と遠坂の情報を刷り合わせる。
教会で俺が出会った金髪の男――
桜と話していたという金髪の男――
その外人は、もっと背の高い青年だった。
だが、思い出してみれば
教会で出会った金髪の少年――
そのサーヴァントに雰囲気が似ている。
もしや、同一人物、なのか?

「なあ、遠坂。
 言峰も……かなりの魔術師、なんだよな?」
桜を治療してくれた時、蟲の除去に刻印を
消費したとそう言っていた。
――という事は、アイツは相当な魔術師でも
あるわけで
ならばサーヴァントのマスターである可能性も……
もしやあの金髪は……

遠坂は何も言わず、難しい顔をして
もう空となった湯飲みを手の中で転がしている。

「ね、アーチャー。
 あのサーヴァント、どうしたの?」
うむ、そうだ。あの金髪サーヴァントと
対峙していた奴の存在を忘れていた。

「ああ、奴とは戦闘にならなかった」
え、なんでさ? それは驚きだぞ。

「そう不思議そうな顔をするな。
 戦わずして勝つ、これも兵法の一つだろ?」
能力的にはかなりのサーヴァントだという。
だが、魔力の供給に問題が生じたとか
本来の目的を失った――奪われた? とか
そう言っていたそうだ。
だからお互い条件を出し合って剣を収めたと。

「その条件って?」
「あの金髪少年のサーヴァントも
 臓硯に何か恨みでもあるようだな。
 臓硯の始末という条件なら問題あるまい」
「それじゃ、戦いにはもう参加しないと?」
「さぁな。今後どうだかは分からんよ。
 だが……魔力不足は相当なようだった。
 奴の魔力保有量は、セイバーのそれと同じか
 それ以上だろうよ。だが、先ほどの奴には、
 その巨大な器に雀の涙ほどの魔力も
 残っていなかったようだ。
 元々魔力消費の激しいタイプなんだろうが
 アレではそう長くは戦闘に関われまい。
 ああ、何かに魔力をごっそり奪われた――
 そんなことも言っていたな」

訥々とした凛とアーチャーの言葉の応酬。
その様子を、俺やイリヤ、キャスターは
聞き耳を立てる他ない。
口を挟む余地が無いほど隙の無い会話。
んー。遠坂とアーチャーって
いつもこんな風に会話しているのか?
らしいと言えば、らしいのだが……
何か……違和感を感じるのは気のせいか?

「金髪のサーヴァントも当面は聖杯を望まず、か。
 うちの士郎といい、キャスターといい
 どいつもこいつも……欲が無いわね。
 てかルール違反もいいトコだわ……」
はぁ、と大きく溜息。

「なんだよ、聖杯を要らないって言っちゃダメ
 なのか? そもそも聖杯なんてあるから、
 こんな戦争が起こるんだろ?
 というか、俺はまだ聖杯を放棄したわけじゃない。
 桜の刻印蟲を取り除くのに――」
はっ!? 今度はイリヤまでもがムッとしてる?
なんでさー!?

「士郎。そんないい加減な気持ちで聖杯を
 望んでいるわけ?
 もし、もしもよ? 桜が聖杯でしか救えないと
 しても、そんな気持ちでいられるのかしら?
 そもそも、あんたの力だけで桜を救えるなんて
 思っているのかしらね?」
グサッと咽に突き刺さる遠坂の言葉。

「もっとも――まだ手に入れてもいないモノの
 使い道なんて話し合っても狸の皮が
 喜ぶだけかな」
「なんだよ。じゃあ遠坂どうなんだ?」
「え? 前に言わなかったけ?
 わたし、聖杯には興味ないわ。システムには興味
 あるけれど願望なんて無いもの。ただ……
 気に食わない奴が聖杯の力を使う、ってのが
 許せないだけ。だからそうなりそうなら、
 私が手に入れるつもりだった、ってとこ。
 そうね、もし手に入ったら――
 究極至高のたいやきかクレープを
 出してもらおうかしら~♪」

ポカーン

くふふ、と笑っている遠坂を見て
一同、我を失うこと凡そ17秒……
それも遠坂の台詞で強制解除。

「ちょっと横道に逸れて良い?」
ああ、と頷く俺。
別に横道に逸れるのはいつもの事だし。
てか、現時点で充分ここは横道だ。
うん。俺のGPSにもそう表示されている。
あ、イリヤもそう思っていそうだ。

「ね、キャスター?
 よくあんな遠隔地に分身を飛ばせたわね。
 ちょーっと興味があるかなーって」

/////////////////
■~今回のNG~

ねこ 「どこまで書いたっけ~(汗)」
凛  「……ガントーッ!」
桜  「クスクス……」
士郎 「無限の剣製!」
ねこ 「にゃーッ」
監督 「再開するにしても、もう少し盛り上がる
    場所からにして欲しいものだ……」

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ひな祭り 期間限定広告の裏

「そういえば、そろそろ桃の節句だな」
TVを観ていた先輩がボソッと呟く。

「桜ちゃんち、ひな人形飾らないのー?」
お煎餅片手に何気なく反応する藤村先生。
その言葉に胸が少し痛くなる。
先輩が気づいてバツが悪そうに振り向く。

「いえ、うちには雛人形は……ないのです。
 あまり女の行事には熱心ではなかったので」
作り笑いで何とか誤魔化そうとするけれど

「そうなの? 古風なお爺さんがいるのにー」
いよいよ返す言葉が見つからなくなる。
どうしようかと頭の中でオロオロしていると

「あ、いや、あるぞ、ひな人形」
先輩がトンデモ助け舟を出してくれる。
「え? 士郎の家(ここ)、ひな人形があるの?」
「あるある。藤ねえのが、さ」
クイッと土蔵を指し示す。
「え? そうだっけ……ぇ?」
頭の後ろに小さく「がおー」の文字が見える。
「毎年、藤ねえがいつまでも飾っておくもんだから、
 おじさん、窮してここに隠していったんだよ。
 そんなんだからいつまで経っても嫁の貰い手が――」

ああ、先輩~! それ以上は……
先生の後頭部に浮かぶ「がおー」が巨大化してます!

・・・・・・・そんなこんなで

「な、なんでさー!?」
クスクス、先輩の断末魔。
先輩のお部屋に、ジャーン♪ ひな壇出現。
藤村先生、私、姉さん、ライダー、それに先輩。
強行採決4対1で決定なのです☆

あれ? でもおかしいですよ、これ。
三人官女が、なんだかとても豪華……??

「ああ、それね。遠坂が持って来た人形なんだ。
 官女が見つからなかったんだけど、そしたら遠坂が、ね」
その先輩の向こうで、先生が超豪華官女人形に敗北中。

「遠坂の家には……ひな人形があったんだ」
記憶に無いひな人形……、複雑な気持ちになっていく。
そこに――
「覚えてないのも無理ないわね……」
甘酒を仕入れてきた姉さんがいた。
「あなたのいた最後の年の節句用にって、
 慌てて買い揃えたものなのよ」

姉さんは桜模様の打掛姿の官女を見つめながら続ける。
「結局間に合わなくて、今日まで出番なかったんだけどね……」

「……!!」
なんだろう、この気持ち。
胸につかえていたものが解け落ちていく。

【桃の節句、桜の節句――】

「さ、ライダーが来ないうちに、甘酒隠さないと、ねー」
姉さんは、わたしなんか気にしないフリをして
さっさと台所に向かおうとする。

「失敬ですねリン。今の発言は訂正して欲しいものです。
 酒、と付けばなんでもいいと節操無いように思われる」

「そう言いつつ……もう飲んでるしー」

「ああ――、しまった!? つい、この甘露な味わいに……」
ライダーも敗北宣言ですか。姉さん、やりますね……

先輩も、先生も、穏やかな笑みを浮かべている。
……あったかいな、ここは。
春はもう直ぐ──

『もういくつ寝ると、ひな祭り~♪』

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冬空に舞う桜花 30.5

=閑話休題=
■深夜のコンビニ

「お客さん、誰も来ないなぁ」
外は寒いけど、店内は暖房真っ盛りで
ほやほやと暖かい。おでんの匂いが
慣れるまでちょっと辛かったけど
今はなんとか大丈夫、かな?

店長はバックヤードで在庫の整理中?
お友達は裏で休憩中?
残ったわたしは一人店内でお留守番。

突然、シフトに欠員が出ちゃったので
初めての深夜勤。緊張してるのです。
だけど……お客さんが来ないので
お掃除がお仕事なのですよ。
雑誌コーナー前の床をゴシゴシ。
ここは汚れが激しいから大変なのだ。

  ♪ピンポンピンポン~

「は!」

お客さんかな?
扉が開いたチャイムの音。

コツコツと音をたてて店内を歩いてる。
冷凍庫の前で……立ち止まって、また歩き出す。
レジかな? サッと周りを見るけれど……あれれ?
誰もいなーい。もう出て行っちゃったの?

「…………????」
おかしいなぁ。
お外にも――人影はないし
お弁当の配達の人が来る時間でもないし。

でも……仄かにイイ匂いがする。
カモミールみたいな……野の花の匂い?

  ♪ピンポンピンポン~

「ええ!?」

まただ。誰もいないのに~。
何だか怖くなってレジのトコに帰る。
と――

あれ? 315円が置いてある。
「由紀香、どうしたン? 何そのお金?」
「あ、蒔寺にゃ~ん」
裏から出てきた楓ちゃんの姿を見て安心しちゃう。
「うん、実はね、
 透明人間さんがお買い物していったみたい」
「はぁ? なんだよそれ?」

  ♪ピンポンピンポン~

「わわ!? まただ」
と思ったら、今度は人間のお客さんでした。

「くっそーッ! なんでアイツなんだよッ!?
 爺も爺だ! 隠し事が他にもあるって
 事なんだよな!?
 くそぉッ! みんなして僕を……ッ!」
プンスカ怒りながらホットココアをお買い上げ。

そんな初深夜勤なのでした。
バイト代奮発してもらえそうだから
今度、気になってたあのお店に行ってみようかな。
氷室さんと、そうだ、遠坂さんも誘ってみよう。
最近、学園に来てないけど、何かあったのかな。
そんなことを考えながら、楓ちゃんと
お店を後にする。
ああ、今日も疲れたなぁ。ここのところ、寝ても
食べても疲れがとれない。花粉症なのかな……?

え? 未成年者の深夜勤はいけないんですか?
くすくす。表向きは未成年じゃありませんよ?
だから大丈夫なの、だ~♪

=?=
Fateの設定の不思議なところの一つに
『何かがある時』は人がいないんですよね。
衛宮邸近辺でも柳洞寺近辺でも交差点や公園も。
サーヴァント戦が行われる時は人がいなーい。
(な・の・に、影が徘徊する時は人がいるという)
何とも不思議ですよね~。ミステリアスー。
コンビニ配送も新聞配達もタクシーも
誰も通らない。それはそれで不気味(ブルブル
結界なのかも知れないけど、
不可視にするだけで、人間の存在を排除とか
出来るのかなー? 謎だ。
もしかすると、結界内に人が偶然入って来ちゃった
場合、結界の境界線を越えた瞬間、溶けるように
消されちゃうとか??
戦争なんだし、そういった意味のない殺戮って
結構起きていそうかも……TT
「隣のおじさん、夜、コンビニに行ったきり
 行方不明なんだって……。家出かしらー?」
みたいな。。。(>_<コワイ

士郎が聞いたら怒るだろうなぁ。

Fateの世界設定を読む限り、魔導を統括管理してる
時計塔は、人の生命や財産云々より、魔術の秘匿に
重きを置いてるみたいだから、四次聖杯戦の時
みたいに大量の犠牲者が出ようとも、情報開示や
救済より隠匿をメインにするんでしょうねぇ。
魔術師の犯罪阻止も唱ってるけど、臓硯や言峰の
犯罪行為を止められなかったんだから
機能不全を起こしてる、って見てOK?
凛が将来的に時計塔に入るのなら、その辺、
どうなのかなー。内紛の火種になりそう?
凛って口では怖いこと平気で言ってるけど
実際の行動は人を思いやってるトコ多いし^^

蛇足ですけど、
そう考えると……Fateにafterがあるとしたら
時計塔vs士郎って形になる場合もあるのかな。
思想的に両者相容れない感じですし。
そこへ教会も加わって、また三つ巴ですか。
冬木市民、また災難降ってきますyo

SS的には――
時計塔と反目する士郎。発端は桜の異能?
凛は両者の板挟みにペッチャンコ。
アーチャーは凛の守護っぽいから、
何かの弾みで再現出したら面白いかも☆
(弓凛復活~)
ならセイバーも復活させちゃえ!(マテ
そこへイリヤ2号機(オイオイ も現れて
さぁ大変。
収拾つかなくなってジ・エンド。。。
(´・ω・`)   
(´・ω:;.:...
(´:;....::;.:. :::;.. .....

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冬空に舞う桜花 30

■衛宮邸 居間会議場
居間に入る。
そこにはまだ充分な温かみが残っていた。
緊張から解放され凍え始めた体にはありがたい。
イリヤはいつもに場所に座ると、
一人で何かをハクハクと食べ始める。
「アイスクリーム? どうしたんだ、それ?」
我が家の冷蔵庫には氷菓子の類はない。
大食漢……もとい、大食淑女の大所帯を
数日間賄う為の貴重な食料で満杯。
そんな贅沢品を納めるスペースなど無いのだ。

「ライダーに買ってきてもらったの。
 問題あるかしら? お金も渡してあるわよ」

はいー? この非常時にサーヴァントを
パシリに使っているのかーっ!?
遠坂も呆れて物も言えない状態。
しかも、ライダーがコンビニでお買い物……?
あの格好で……?? あり得ないぞ、それ。

「いいじゃない、ついでなんだし。
 それに、魔力だってちゃんと提供してるから
 ギブアンドテイクになってるわよ」
ハーゲンデッツのバニラをウマウマツ~ンッと
頬張りながら、答えるイリヤ。

片や、遠坂もいつもの場所に座る。
俺は湯を沸かしてお茶を用意する。
いつものパターン。
だけど、この場に桜の姿がないのが……寂しいし、
もどかしいし……悔しさもひしひし募ってくる。

「さーて、話を聞かせてもらえるわよね」
熱々のお茶を前に頬杖ついて
詰問モードに入る遠坂。

ああ、またこのパターンだ。これで何度目だ?
さすがに今回、キャスターの行動に問題があったのは
否めないのだが……というか
この二人、息が合っていないと思うのだが
上手くやっていけるのか不安だぞ。

「無論です。話は多少長くなりますが――」

キャスターが言うには……
そもそもの発端は数ヶ月前に遡るという。

キャスターとして召喚され、初めて受けた命令が、
この冬木市の詳細なマナ分布の調査であったという。
キャスターの得意分野である要塞・陣地の構築には
必須のデータであると同時に、敵となる者の所在や
その動向を探る意味合いもある。

だが、その作業はキャスターの一身上の都合により
その時点では実を結ぶことはなかったが、
後に、柳洞寺に陣を張る際には、その知識が
大いに役立ったという。

聞けば、この冬木市自体魔力に関わる条件は抜群で
いくつもの地脈・霊脈が縦横に走っているという。
また、それらの交叉点上にはマナの溢れる
優れた場所があるとのことだ。
柳洞寺、教会、穂村原学園、公園、間桐邸、
遠坂邸、それに衛宮邸がその代表的な場所らしい。
アインツベルンの森が調査対象にならなかった
理由はキャスターには分からないという。

これら該当地の中で、
後日、気になる場所が見つかった。
それが間桐邸と遠坂邸、衛宮邸。
そして――件の教会であった。
これらに共通していた不可解な点とは
マナが豊富な場なのに、敷地内にマナの検知されぬ
意図的に遮断された空間があったことだという。

それぞれの邸宅は魔術師の物件であるから
外部から勝手に探査されぬよう
遮蔽が施されているのは分かる。
よって当該より排除。
だが、教会は別だ。

後日、教会の存在理由を遠坂から教えられた
キャスターは、疑問を大きくした。

聖杯戦争の監督官が詰めているとはいえ
多くの一般人も拠る神の家に
何故、マナの遮蔽された空間があるのか?
単に戦闘不能となったマスターを囲う為の
空間なのか? それとも――
その疑問の答えを得るべく
行動した結果が……アレだったわけだ。

時間を追う形で説明される。

一足速く、教会に飛んだキャスターは
まずは外より監視を始めた。
だが、まるで機を測ったかのように
そこに臓硯一派が現れる。

はじめ、言峰と臓硯は何か会話を交わしていただけ
だったが、そのうち戦闘へ発展していったという。
アサシンを相手に、言峰は互角以上の戦いを
展開したが、セイバーと影の出現により、
形勢は一転。
そこでキャスターがアサシン、臓硯に攻撃を仕掛け
乱戦に至り、そこへ俺たちが到着した、と。

あれ? ちょっと待てよ。何か引っかかる。
キャスターのマスターは葛木先生だったんだろ?
最初の命令がマナ調査って……
先生は魔導に通じていたのか?

と疑問が過ぎったが、遠坂はそのまま淡々と
キャスターの話を聞き入っている。
うん、取りあえず俺の疑問は――後回しだな。

/////////////////
■~今回のNG~

ハーゲンデッツのバニラをウマウマーツ~ンッと
頬張るイリヤ。

凛  「じとーーー」
イリヤ「……あげないわよ」
桜  「じとーーー」
イリヤ「……だからぁ」
桜・凛「じとーーー」
士郎 「……はいはい、わかったよ。俺が
    ひとっ走り行ってくればいいんだろ?」
監督 「じとーーー」
キャス「じとーーー」
士郎 「あのなーw」

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冬空に舞う桜花 29

■幕間 衛宮邸 客間
 ビキッ!
激しい衝撃。
幾重にも鋭い亀裂が走り
その水晶球は砕けかかる。

「う、くッ……ぅ」
衝撃で眼鏡を飛ばされた男が小さく呻き
よろよろと床に崩れた。
紅く染まっていた彼の瞳は、徐々にその色を失う。
「イッセイ――ッ!?」
「い、いや――大丈夫。心配はご無用……」
荒い息を堪えながら、
手を貸そうと詰め寄る女性を制する。
その女性もまた、額から一筋の血を流している。

「やはり……こういうこと、か……
 メトセラめ……小細工を」
そう罵るように言って、再び男の脇ににじり寄り、
癒しの手で応急的な介抱を行なう。

その横、辛うじて球体を保っている水晶には
今もなお、深夜の教会が映し出されていた。
その中心には、金髪の少年。
「しかし――この者は、いったい……」

男のダメージが一応の回復を見ると
女は再び水晶球に向き直す。
小さく手をかざすと、水晶はそれに応え
光の像を結び直す。

【映し出されたのは……空のベッド】

その映像を最期に、
水晶は乾いた音を立て崩れ落ちた……

■衛宮邸 玄関
「──ッ!?」

「足はついていましてよ?」

藤ねぇお気に入りの虎縞の絆創膏を
おでこに「ペンッ」と貼ったキャスターが
そんな事を言いながら立っていた。

顔を見合わせる俺と遠坂。
ドッと疲れを感じてしまうのは何故か……

「あーもうっ! いろいろ考えて大損したーっ!」
今度は遠坂がプンスカ怒り出す。

それをあの手この手で宥めながら、
そろりそろりと居間に向かった。

/////////////////
■~今回のNG~

辛うじて球体を保っている水晶球には
今もなお、深夜の教会が映し出されていた。
その映像の中心には――
麻婆丼大盛りの皿を手にした男。

キャス子「ウホッ、誰――この人w」

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番外編 バレンタインデー@桜 CG付き^^;

Sakura26b

今日は2月の14日。
待ちに待った日。
先輩は、学校帰りに
寄ったアルバイト先から
まだ帰ってこない。

先輩のことだから、きっと、チョコ、
たくさんもらってるんだろうなぁ。

姉さんはきっと、とっても高いチョコを
義理チョコだー! なんて言いながら
あげるんだろうなぁ。
きっとホワイトデー対策よね、アレ。
藤村先生はいつもと同じ、パラソルチョコかな?
美綴先輩もチョコを用意していたっけ。
チロルの10円チョコ……うふふ、かわいい。

わたしは、一週間前から準備した手作りチョコで
勝負なのです。
3回も失敗してしまったのは内緒。
熱の加減を間違えると風味が飛んでしまうの。
その温度を見つけるまでは失敗の連続。
う~ん。スィートのレシピも集めないとダメかな。

でもでも、最後に出来上がったのは、
自分で言うのもなんだけど、かなりイイ感じ。
柔らかい甘さと、ほんのりとした苦みが
上手くバランスとれたと思う。
あとは……先輩の口に合うかどうか。

きっと、先輩のことだから
どんなチョコでも「美味しい」って
言ってくれるんだろうなぁ。

――ドキン

先輩の笑顔が思い浮かんで
ちょっと胸が弾む。

こんなチョコレート一つで、こんなにもドキドキ
できるなんて、自分でも思いもしなかった。

バレンタインデーのことは、二年ほど前
藤村先生から教えてもらった。
あの頃はまだ、全然余裕なかったから、
こんなイベントがあるなんて知らなかった。
その時、来年は先輩にチョコレートをプレゼント
しようと、そう決めたけれど……。
次の年は兄さんに見つかってしまって
結局渡せず仕舞いで終わっちゃった。
その次の年は……あの戦いの真っ最中。
バレンタインデーなんて、すっかり忘れていた。
そしてようやく……

――あ

感覚に、コツンッと来るものがあった。
うん。――今、先輩が門の前に到着。
さっそく玄関に直行!

「おかえりなさい、先輩」
「ただいまー」

バッチグーなタイミング。
つくづく魔術って便利だなぁーと思ったり。

「先輩、収穫はどうでしたか?」
ちょっとイジワルな質問。
「え?」
案の定、?な表情の先輩。
うんうん、先輩らしくてOKなのです♪
「チョコレートですよ、バレンタインの」
「あ、ああ。6個、かな」
ほぉほぉ。それはイイ数字ですね、先輩。
バイト先でももらったのかな?
そんなお話ししながら、お茶の間に移動。

「こんな感じだな」
そう言って先輩は鞄の中からいろいろな
包み紙を取り出してみせる。

うーん。
チョコだけに、ちょこっと複雑な心境。
なんだか胸の奥でモヤモヤと。
これって……やきもちなのかなぁ。

――あれ?
その袋についた香りに……心当たりが。
先輩がそれを開けると……中身は
チョコレートボンボン。

はッ――!?

そういえば……ここのところ、
ライダーの様子が……。
時々、視界の共有を切っていたし。
それはこう言うことかー!

それならそうと言ってくれたらいいのに。
などと思いながら、一方で、心の中は
ドキドキでいっぱい。

「あの……先輩、これを!」
えいッ! と先輩に差し出す。
「あ、ありがと……桜」
大事そうに袋を受け取ってくれた感触が手に残る。
その感覚を忘れないようにしながら
そーっと瞼を開けると――

そこには……真っ赤になった先輩がいた。
双眸に浮かぶ光がかすかに揺れている。
先輩は照れ臭そうにしながら、
袋を開けて中身を取り出してくれた。

「あれ? 桜、これ……」

え? ああああああああ!?
「と、溶けて、る? そんなぁ」

「あ、炬燵の天板の上に置いてただろ?
 ここ、温かくなるからなぁ……」

ふぇぇぇぇぇ……!
ここ一番と言うところで……
姉さんのドジッ子が移っちゃったのかしらぁぁぁ。

でも――

「うんうん……これは――」
トロトロに溶けて崩れたチョコレートを
指を汚しながら口に運んでくれる先輩。

そして――感想

「うん。桜の味がする」

ッ!!

どうしてなんだろう。
それを聞いた瞬間、目頭が熱くなってきて
視界がユラユラと滲み始めて来ちゃった。

「お、おい。桜?」
動揺してくれる先輩が……とても愛おしい。

これがわたしのバレンタインデー。
一年に一度、
女の子が男の子にチョコレートを渡す日。
来年もバレンタインデーはきっと来る。
でも、今日というこの日は――もう二度と来ない。

だから……忘れないようにこの想いを
胸深くしっかり保存しておこう。

「大丈夫です。それじゃ、お夕飯の仕度しますね。
 直ぐ出来ますから待っていて下さい」
そう言って台所に向かう。
そしていつものように先輩が後ろから来て
わたしを手伝ってくれる。

それは――
いつもと変わりない日常。
わたしの『宝物』。

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冬空に舞う桜花 27

■教会前
戦場を後にした俺と遠坂は
教会前の無人の広場を駆け抜ける。
ここまでは伏撃も無く順調に来ている。
とはいえ警戒を解くにはいかない。

今は敗退に近い状況であり行動速度も重要。
もたもたしていたら、それこそ好餌食になる。
「こっちだ。公園の中の最短ルートを行こう」
「いいの? 臓硯が罠を張っているわよ、きっと」
相手は常に先手を打ってくる熟達した策士。
だが、悠長に遠回りしている時間がないのも事実。
それに――
「罠が完成する前に、突破してしまえばいい」
速度に関してはセイバーに学んだことが多い。
先んずれば機を制する、と。

■公園
橋を渡り公園の中を突き進む。
不可解なことに、
ここまで来ても臓硯の妨害は一切無かった。
攻撃を仕掛けられる好適地は、
いくつもあったというのに。

間もなくして、前方に、街灯に照らされた
公園の一角が見えてくる。
連想されるのは……雨、雨、雨。
そこには小さな想い出が待っている。
きっと、これからずっと、記憶の重要な一角を
成すであろう大切な……場所。

その時の――
抱きしめた肉体の柔らかさと、か細さと、
狂おしいまでの哀しさが、
否応なく思考を揺さぶりに来る。
胸を掻き毟りたくなるような衝動に駆られながら
更に道を進んでいく――

■十字路
ここに至るまで、往路も含め不気味なまでに
人気がない。まるで誰もいない世界に
紛れ込んでしまったような錯覚。

前を行く遠坂の背が何故だか愛しく感じる。
と同時に、切とした緊張感のせいか、
掌にむずむずとした、
こそばがゆさを感じてしまう。

「気が付いてる、士郎?」
「──ん? 何がだ?」
はて、と感覚にアクセスして、異常を
感じていないか再チェックをするが――
イレギュラーなものは特にない、が?

「やだ、異常無さ過ぎだと思わないの?」
む? 言われてみればその通りだ。
それなりの伏撃を想定していたものの
妨害のぼの字も受けなかったのは事実。

「誰か……援護してくれているみたい、ね」
「え、そうなのか?」
警戒対象を危険な動体に絞っていたとはいえ
俺には何にも違和感も無かったのだが、
遠坂によれば、ここまでの所々に
僅かではあるが戦闘痕があったという。

「もしや、アーチャーか?」
「ううん、それはないわ。
 アーチャーはもう家へ向かわせてる」
どうやら、金髪少年との悶着をさっさと終わらせ、
いつの間にか追いついていた模様。

「まさか……あの金髪少年、じゃないよな。
 キャスターは……有り得ない、し」
「…………」
言葉を失い沈黙が訪れる。

キャスターの戦闘に至る経緯は全く不明だし
あの直前、影を庇ったかのような不可解な行動など
分からないことはあまりに多い。
ただ、戦闘の結果、キャスターを失ってしまった
という、曲げようもない事実だけが残された。
ここに来て、再び犠牲者を出してしまった。
それは、俺たちが、再び大きな窮地に立たされる
事を意味している。と、同時に──

買い物の時の、食卓を囲んでいた時の、
葛木先生を悼んでいた時の――
キャスターの顔が、声が、思い起こされる。
一成がこの事を知ったら……どう思うのだろうか。
いや、それよりも……
いったい誰がこの悲報を伝えられるというのか……

■衛宮邸 外縁
ここまできて、ようやく自分のテリトリーに
近付いたという実感が湧いてくる。
「はぁはぁはぁ……俺の心肺、
 機能してんだろうな? くッそぉ」
往く時はこれほどまでに時間を感じなかった。
まるで体に錘がついているようだ。
復路は一秒一歩が……とても遠く感じる。
あと少し、もう少しだ。
桜は、イリヤは、他の皆は無事だろうか。
急く気持ちを抑え、警戒を怠らぬよう
気を引き締め、ラストスパート。

/////////////////
■~今回のNG~

桜は、イリヤは、他の皆は無事だろうか。
急く気持ちを抑え、警戒を怠らぬよう
気を引き締め、ラストスパート!

「いーしーやーきーいもー。おいも♪」

遠坂  「――ッ!」
士郎  「お、おい遠坂? おーい」
桜   「ライダー、お願い!」
ライダー「任せて下さい! ベルレホーン!」
士郎  「…………」

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冬空に舞う桜花 26

■教会 裏手
赤き背がそこにあった。
「出番をよこすのが遅すぎるな、リン」

何も携えていなかったその両の手に、
一振りずつの短剣が――現れる。

――ガチンッ

金属の音

それは何の音だったのか。
外からでなく、ましてやアーチャーからでもない。
自らのうちに響く音……

【ああ――、そういうこと、なのか】

アーチャーの干将莫耶が華麗に円を舞い
セイバー必殺の剣戟を手玉にとっていく。

一方、セイバー吶喊に呼応し
周囲に散っていた蟲も一斉に動き出す。
右から十五、左から七、後ろから十、
そして前方からは黒きセイバー。
普通に戦っては処理しきれぬであろう見事な連係。

「このぉッ! Ein、Zwie! Flitze――」
懐から取り出した宝石を両手に掴み、
それを蟲に投撃しようとする遠坂――

「リン、貴重な宝石、無駄遣いをせずに済みそうだぞ」
セイバーの二撃三撃を撃ち払いながら赤の男が言う。
「――えっ?」

俺の右手には──、干将。
それはまるで意思でも持つかのように螺旋を描く。
蟲どもは空中にあるうちに――全てを両断!

「士郎……あんた?」

パチンッ

「――リンッ! 下がれッ!!」
アーチャーの声に遠坂の驚きも掻き消される。
反射的に一歩下がった遠坂の直ぐ目の前を
見知らぬ銀刃がかすめ飛んでいく。

「我の所有物を手にかけるとは、許せぬ」

それはどういった攻撃なのか
無数の剣、槍、矛、矢、ありとあらゆる武具、
しかもその何れもが宝具級というそれが、
一斉に宙に放たれ鋼鉄の一線となって、
ある点に向かい飛翔していく。

目標は俺たちではなく、遥かに前方、
あの影をまとう怪物に向けて、であった。

だが、ヒラヒラと落ちてきた何かに
それら武具の突入は阻まれた。
「な――キャスター!?」
彼女に二度目の奇跡は訪れなった……
圧倒的な火力の前に蒼き衣のローブは四散し、
その姿は跡形もなく消え去った。
なぜキャスターが?
だが、疑問を問う暇も無い。

「チッ、こざかしい」

剣を構え、声のするほうを見やる。
そこには場違いとも思える人影が一つ。
金髪の少年が一人佇んでいる。
見た目は中学生程度の身の丈で痩せ型。
とても猛者には見えない。
だが、少年の放つ闘気は尋常でない。
絶望感さえ覚えるそれは、
おそらくセイバーやバーサーカーさえ
遥かに凌いでいるのではないか?

片手がスッと上がる。
と、宙に無数の武具が現れ始める。
先刻、投擲されたはずの特徴ある剣も、そこにある。
「魔術師……? いえ……サーヴァントッ!?」

遠坂の絶叫よりも、臓硯の反応は素早かった。
或いは、この謎のサーヴァントの存在を
予め知っていたのかもしれない。
セイバーを下げると、自身は影の陰に
身を潜ませ、其処彼処に口を開ける闇へと
後退していく。

少年の指先が微妙に揺れる。

が、次に動いたのはアーチャーだった。
大きく二歩進み、遠い影と少年の間に割って入る。
「卑賤の分際で邪魔立てをする気か」
「残念だが、アレを今、始末される訳には、
 いかないのでね」
その皮肉めいた台詞に、金髪の少年の顔が歪む。

「アーチャー! いったいどうする気──」
その遠坂の声を、
アーチャーはスッと出した左手で制する。

キャスターを失い、臓硯との対決も、
知らぬサーヴァントの出現により水入り状態。
これでは、この戦闘に多くを求めるどころか
むしろこちらの身が危うい。
それに――
俺たちがここにいる事を臓硯に知られた以上、
手薄となっている家を放置するわけにもいかない。

「そうね、わかったわ。ここは任せる。
 でも、決着をつける必要は無いわよ。
 時間稼ぎだけ、お願い!」
「ああ、承知している。
 倒すべき敵は何か、理解しているつもりだ」

「士郎、わたしたちはいったん退くわよ!」
そう言って特大ガントを退路上に残る蟲の群れに
撃ち込み血路を開く。
俺も遠坂に従うべく踵を返そうとしたとき――

「あの時、振り払ったつもりだったのだがな……」
俺と遠坂、そして――あの影の盾となり、
恐るべき謎のサーヴァントと対峙している
アーチャーは、何かそのようなことを呟いていた。

「アーチャー、おまえ……?」
「――衛宮士郎」
あいつは、俺を呼び止める。その背は、
強力無比な敵を見据え一歩も退く気配を見せない。

「適性のないおまえが負けられぬ戦いに臨むのだ。
 ならば、せめて想像の中で勝てるものを
 イメージしろ。
 違えるな。イメージするものは──常に最強だ」

そしてアーチャーは一つ息を吸い込むと
静かに、そしてとてつもなく深い言で、
詠唱を練り上げ始めた。

『I am the bone of my sword ――』

その言の葉は、
まるで砂に浸潤していく清水のように
胸に染み入ってきた。

と同時に、
膨大な魔力に圧され視界内の光像が歪み、
空気は一気に粘度を増して呼吸と運動を困難にする。

それで悟った。
アレは、アーチャーのアレは――
この世界とは全く理の違う、もう一つの世界を
創造しているのだ、と。

『――Unlimited Blade Works.』

俺は遠坂の後を追って走り出す。
その背後……
その一節を響き残し、
アーチャーと金髪の少年の姿は、
この世界から……消えた。

/////////////////
■~今回のNG~

凛 「このぉッ! Ein、Zwie! Flitze――」
懐から取り出した宝石を両手に掴み、
それを蟲に投撃しようとする遠坂!

凛 「鬼はー外ッ!」
臓硯「いだだだだだだだだ!」
凛 「福は内~☆ ポリポリ^^♪」
凛 「鬼はー外w」
士郎「痛ッてぇ! 俺もかーいっ!」
慎ニ「ヤッフー! イェーイ、タイムリー」
凛 「鬼はー外ッ!! うりゃーッ!」(ガント入り)
慎ニ「ギャーッ」
凛 「福は内~♪」

桜 「ポリポリポリポリポリポリ^^♪ おかわりー☆」
凛 「……もう無いわよ」
桜 「シクシク……」

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